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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【ヒトの遺伝子ってそんなに少ないの】

2001.3.1 

 驚きました。ここ二、三日お眼にかかる人のほとんどが「ヒトの遺伝子の数」を話題になさるのです。企業の方、ジャーナリスト、学校の先生、主婦…。もちろん、このように分類できる方たちの中に以前からDNAやゲノムに強い関心を持っていらした方はあるのですが、ここ二、三日は、今まで何度もお眼にかかっているのにゲノムのゲの字もおっしゃらなかった方が皆それを持ち出します。
(これを書いている数日前に、新聞でこれまで8万から10万と思われていたヒトの遺伝子の数が3万程度なのではないかとわかったという報告があったのです。この数があのショウジョウバエの2倍程度というのでインパクト大だったのです。おいおい、私はハエのたったの2倍かよと不満な人も多かったようで。)
 ヒトゲノムをつくる30億ほどの塩基配列が解析されたということと、遺伝子が3万個ほどということはどういう関係があるのか。この基本から始まって、雑談即席ゲノム学をだいぶやりました。この背後に山のような事柄があるので、即席ではすまないんだけどなあと思いながらも、関心をお持ちの時に少しでもという気持ちです。
でも、ゲノム研究が進み、記者会見が行われるようになって皆の関心を呼び…、これで生きもののことがわかって多くの人が生きものの本質を理解し、生きものが大事にされる世の中になるだろうという気持ちになれるなら生命誌としてはバンバンザイなのですが、なんだかそうではなくお金儲けの方につながっているようで気になります。もっとも今回多くの人の関心は純粋な好奇心から出ているように見えましたのでこういうところを上手に生かしたいと思います。それにしても、ゲノム研究の成果が本当によい医療につながるまでにはたくさんたくさんやらねばならないことがありますし、ここから先が大事です。

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