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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【遺伝子は毎日食べている】

2000.7.3 

 しばらくの間、話が宇宙へととんでいましたが、その前にお約束していた遺伝子組換え食品の話題に戻ります。
 先日、あるお年寄りと話をしていてハッと気づきました。その方はこうおっしゃったのです。「遺伝子組換え食品についてはこまかいことはわかりませんが、とにかく遺伝子が体の中へ入ってくる。するとそれは子孫につながるわけですね。私はもう構いませんが、家の娘や孫がそれを食べたら子孫になにかおかしな遺伝子がつながっていくのではないかと思うと恐ろしいのです」こういうことを恐れているのだということはなかなかわからないのです。ここに、いわゆる専門家とそうでない方の間の溝があるのですね。
 まず、普段食べているものを考えて下さい。昨日は何を召し上がりましたか。牛肉、豚肉、鶏肉。イワシ、アジ、なんでも結構ですがイワシにはイワシゲノムがあり、そこにはそれらの遺伝子がたくさんあります。毎日私たちは他の生物からたくさんの遺伝子をとりこんでいますが、イワシを食べたからといってイワシらしくなることではありません。
 まず申し上げたいことは、私たちが毎日食べているのはほとんどすべて生物で、それは遺伝子だらけ、つまり毎日遺伝子を食べているということ。そしてそれらはすべて分解され、改めて私たち自身の遺伝子に作りかえられていることです。遺伝子組換え食品だけが遺伝子を持っているわけではないことをまず確認しておきます。そして、他の生物からとり入れた遺伝子、つまりDNAは一度その成分に分解されてまた私たちのDNAをつくる素材に使われていることも確認しておきたいと思います。
 そこから先はまた次回に。

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