館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【続 宇宙での腰痛】
2000.6.15
ところで、地球では私たちは立つにしても座るにしても垂直に、つまり地球の重心を下にしています。もちろんそんなこといちいち考えていませんが。机も椅子もそのように置かれていますから、机,椅子,その他の家具の線と平行または垂直の関係にあるのが普通で、もしそうでなければ落ち着かないでしょう。宇宙では重力がほとんどありませんから、どちら向きに立っていてもよいわけですけれど、やはり周囲のものと垂直、または平行にいないと落ち着かずそういう向きにいようとしてしまうのだそうです。宇宙船の向きによって、最も楽な姿勢のとれる方向は必ずしもそれには合わないのに無理に垂直になろうとするので腰に負担がかかることになる。それが続けば腰痛も起きようというわけです。でも二回目は自然に楽な姿勢がとれた。生物としてはずーっと1Gの重力下にいたのに、まったく新しい環境でも一度で慣れてしまうというのですから人間の体の柔軟性には感心します。この場合、体と言いましたが、もちろん脳も含めての体です。他の生物も慣れるのかどうか、人間の脳に特有の柔軟性なのかどうか、体と脳の関係はどうなっているのかなども興味がわきます。これから宇宙での実験が重なっていけばこういうこともわかってくるのでしょう。楽しみです。 |