館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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【骨から形―いや形だけでなく暮らし方も見えてくる】
2000.2.15
骨っていうと硬いもの、きまりきったものという感じで、あまり動きを感じませんね。私もそう思っていて、遺伝子の巧みな制御で免疫現象がおきるとか、脳神経細胞がネットワークを作っていくとかいうダイナミックな生命現象に比べて、骨なんて面白くないのではないかと思っていました。数年前まで。ところが、最近進化学と発生学が結びついて― Evolution と Development なので、この二つを関連づけて考える分野を「エボ・デボ」と呼びます―とても面白くなったところで、さてと眺めると骨が浮び上がってくるのです。 私たちの身のまわりで複雑な形を見せてくれる生物は、脊椎動物と呼ばれる骨のある仲間が多い。お魚から始まってカエルなどの両生類、トカゲなどの爬虫類、鳥類、哺乳類と骨の変化が見られます。魚の骨を思い出していただけば、頭の下からしっぽまでズラリと並んだ骨があり、まだ首はありませんね。そこから首の骨ができて・・・でも最初は上下しか動きません(イモリを思い浮べて下さい)。ラジオ体操で「首の運動」と言われても魚は困ってしまうし、イモリは上下の運動しかできないわけです。とう具合に首がどのようにできていくかを見ていくだけでも、それぞれの生きものたちの姿形や運動の方法、したがって暮らし方が見えてくることになります。骨全体の変化を見ていくと、まさに生きものが見えてくる・・・ということを実感なさるために是非御来館ください。 |