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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【オサムシ君宇宙へ】

1999.8.15 

 先回毛利さんからの電話の目的は次回にとお約束しました。
 宇宙飛行士は、その搭乗記念に個人の持ちもの・・・もちろん小さなものを持っていってよいのだそうです。先回は御家族の時計などを持っていらしたのだけれど、2回目は友人のものにしようということで、私にもお誘いがありました。さて何にするか。ここで、真先に私の頭に浮んだものと、毛利さんからの提案とがみごとに一致しました。オサムシです。もちろん、生きているのはダメ、標本です。それもそのままの状態では他のものと一緒の袋に入れ、真空にするので、脚がもげたり、触角がなくなったりしかねません。そこで樹脂の中に閉じこめて連れて行っていただくことにしました。数あるオサムシの中で宇宙行きの栄誉をになうのは・・・これも、私の頭に浮んだものと大澤省三顧問の提案とがみごとに一致しました。 Carabus(Shenocoptolabrus)osawai 。名前からおわかりのように大澤先生の発見された新種です。地球の立体地図づくりのために飛び立つ宇宙船に乗って、4000万年かけて、各地へ移動し、すみついたオサムシが自らの体験した生命誌を思いおこしてきてくれることを願いながらわがミッションを送り出そうと思います(NASAへの申請は標本ではなくペーパーウエイトということになっているそうです)。
 それにしても、DNA研究、宇宙への飛び立ち、熱帯林の探索、いずれも20世紀後半の科学の特徴を示すものです。このような知が21世紀の暮らしを明るいものにしてくれるであろうという期待もついでに ― ついでというにはちょっと大きすぎる事柄ですが ― こめたいと思います。
 9月16日出発予定とのこと。毛利さんのお仕事の成功を祈ります。
 先回も書きました。夏休みです。お越し下さい。

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