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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【Sense de Vie】

1999.3.15 

 一番好きな季節は?と聞かれたら、まだとても寒いのだけれど、電車の窓から見える土手にほんの少し緑が見えたり、街路樹に出始めた芽に気づいたりする頃と答えます。2月の末くらいでしょうか。でも今年は、その辺りがあまりはっきりしないうちに、梅がきれいに咲き、沈丁花もあちこちから匂ってきて・・・冷た〜い中の薄い緑の楽しみが少なかったのが残念です。季節感は、住んでいるところそれぞれで違うのでしょうね。今朝ラジオをつけたら、4才の時病気で失明なさったという女性(20代最後と言っていました)が、鳥に夜明けを教えてもらったという素晴しい文を朗読されました。山の早朝。鳥の声を待っていたけれど一つも聞こえない。そこにサンコウチョウのホイホイという声がし始め、それから10分ほどの間に、次々と鳥の声がしたというのです。私も眼をつぶってみたら、とってもきれいな夜明けの空が見えてきました。作者名は忘れましたが「鳥に教えてもらった空」という作品だったと思います。彼女はフランス語の“Sense de Vie”を大切にすると言っていました。そう言えばレーチェル・カーソンの最後の著作は“Sense of Wonder”でしたね。“Sense”、日本語でもセンスと言うのでしょうか。とにかくこういう感覚を鋭敏にしておきたいと思います。次はもう桜でしょうか。

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