館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
バックナンバー
ある有名な僧侶がクローンについて書いている文がありました。「クローン羊をつくったというニュースを見て、人間の資質もここまで落ちたかと愕然とした」というのです。これには正直言って、呆れました。恐らく、クローン羊をつくるということが具体的にはどういうことで、どのような意味を持っているかを検討していないと思えるのでそれも問題ですが、もっと気になるのは、宗教という、人間を直接考えるところにいる方が「人間もそこまで落ちたか」と他人事のように言っていることです。どういう人間がどういう考えでそれをやったのか、そこには自分と共通する考え方、時には悩みはないのか。それを知って初めて、ではどうするべきだという答探しが始まるのですし、その答探しには、宗教家も加わる責任があると思うのです。いや、"も"ではなく中心になって欲しい。一緒に語れば、科学者だって、あれこれ悩みながら仕事をしていることがわかっていただけるでしょうし、恐らく、悩みは同じ(偉い僧侶でも悩みはあるでしょう)だということもわかってくるはずです。クローンは大事なテーマです。御意見を。
|
中村桂子の「ちょっと一言」最新号へ