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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【やはり続く生命】

1998.8.1 

 もう一度ダンスフェスティバルに関連して。今考えていることを400字でと言われ、たまたま貰った手紙を素材にしました。彼のことはまた紹介します。
 「東京で『未来学』研究をしているうちに農業に未来を探るべきだと思うようになった友人は、愛知県の山村に農園を持ち農学校を始めました。農業まで工業化してしまった社会はおかしい。本当は工業も農業のように、時間を大切にし、循環の中で行なわれるべきなのに。その思いを確かめるために、まず本当の農業を確立しようとしたのです。田畑を耕し山羊を飼い、循環型産業とするだけでなく、パンや味噌を作り、食の基本を支える総合産業をめざして小型ながら着実に歩を進めています。先日久しぶりに手紙が来ました。『僕はやはり未来学が好きなのです。不況などと言わずにここに来て下さい。濡れ手に粟のお金は手に入りませんが、確実で安定した心豊かな生活は保証します。農業からは未来が見えます。』
 20世紀はなんと生命をないがしろにした時代だったかと思います。変わりもし絶えもしながらやはり続いていく生命。そう、続いていくのが生命なのです。」

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