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研究館より

ラボ日記

2024.12.17

長年Macを使ってきましたが

僕が高校生の頃は、日本で販売されていたパソコンといえば、コマンドラインで操作するものばかりでした。高校生の時に、アメリカのサンノゼでホームステイをする機会に恵まれましたが、そこのお母さんがマウスでカーソルを動かしてポチポチするだけでほとんどの操作ができてしまうパソコンを使っていました。それが初期型のMacで、「なんだこれは!?」と激しい衝撃を受けたのを覚えています。

 

帰国してから、あのパソコンが欲しいなと思って調べてみたら、なんと日本語が使えない上に車が買える値段だったことに再び衝撃を受けました。

 

大学院生になった頃にはWindows 95が発売されて、GUIのパソコンが普及しました。日本でも日本語が使えて庶民でも買える値段のMacが販売されるようになり、頑張って手に入れて修士論文や博士論文の作成に大活躍してくれました。

 

歴史的に、Macは使い勝手の良い統計解析ソフトがあったことも影響して、多くの生物学研究者に支持されてきました。2000年代に入って、Mac OS がUNIXベースになったことで、あまり苦労せずにUNIX用の解析ソフトが利用可能となり、日常の作業を便利なGUIで行いながら、同じ環境でUNIXのCUIアプリを使用できることが科学者にとって大きな利点となりました。研究で使うアプリの多くは、UNIXで開発されていたからです。

 

そして現在、ゲノムデータや実験データの解析では、多様なツールが活用されていますが、大多数はLinuxで開発されるようになっています。Anacondaは、PythonやRの環境を統合的に管理できるプラットフォームとして広く利用されています。Anacondaを使用することで、Linuxで開発されたツールもMac用のバイナリが簡単に見つかり、簡単にインストールできます。開発・提供してくださる皆様には頭が下がります。

 

近年、解析ツール開発の主流はUNIXからLinuxに移行しました。Macにはバイナリが提供されていなかったり、ソースコードが公開されていなかったりで使えないことも稀にあります。一方、WindowsのWSL(Windows Subsystem for Linux)を活用することで、LinuxのバイナリがそのままWindows上で動作し、特別な手間をかけずに解析ソフトを使用できるようになりました。試しに使ってみたら、Windows用のアプリと共存してLinux用のアプリがそのまま動くことに驚きました。かつてはMacが得意としていた、日常の作業は便利なGUIで必要な時だけUNIXアプリを使うという環境が、今はWindowsとLinuxのコンビにとって代わられたのです。しかもMacとUNIXのコンビ以上に境目がありません。

 

今後、Windowsが解析研究においてさらに便利なプラットフォームとなるという可能性を感じています。そんなわけで、かれこれ15年使っている解析用のMac Proが壊れたら、Windowsベースのワークステーションにするかもな、と下調べを開始しています。

アゲハチョウを研究材料として、様々な生き物がどのように関わり合いながら「生きている」のか、分子の言葉で理解しようとしています。