1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 原腸形成モデル

研究館より

ラボ日記

2023.05.02

原腸形成モデル

論文が出ました(https://link.springer.com/article/10.1007/s00427-023-00701-1)。両生類の原腸形成三部作の完結編です。

ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、私たちは前世紀の初頭から世界中で信じられている「両生類の原腸形成モデル」が誤りであると考え、独自のモデルを提唱しています。仮説とは、その時点での実験や観察結果に矛盾しないものですが、その仮説では説明できない事実が現れた時に修正が求められます。私たちが行なってきた様々な実験から、現行モデルでは説明できない結果が得られてきたので、過去の実験事実とともに、新しい実験事実をも同時に説明できるモデルを考えたわけです。

私たちは、現行モデルがおかしいとする論文を2002年に公表しました(http://www.ijdb.ehu.es/web/paper.php?doi=12382943)。さらに実験を重ねて、一応の完成版となる独自モデルの論文は2015年の公表です(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dgd.12200/abstract)。足掛け20年を超える研究の結果として、今回の論文では、脊索動物門に属する動物全体の原腸形成運動を説明するモデルを新たに提唱しています。簡単にいうと、「基本的な組織の動きは原索動物(ナメクジウオ)の時点で確立しており、組織運動の見た目の違いは卵が持つ卵黄の量による」です。英語に抵抗がある方もいらっしゃるでしょうが、図だけをご覧いただいてもなんとなく私たちが言いたいことが理解できると思います。どうぞ、論文のサイトを訪問してください。

上にも書きましたが、現時点ではすべての事実を説明できるモデルだと考えていますが、このモデルでは説明できない新しい事実が現れた時には、それをも説明するさらに新しいモデルの構築が必要となります。「漸近的な真理」を求め続けるものが科学であると言われますが、研究を通してこの言葉を実感しています。

橋本主税 (室長(〜2024/03))

所属: 形態形成研究室