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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2025.04.01

DNAの絵本ができあがりました

今年最初の一言で書きましたDNAの絵本、『あなたの中のDNA』が発売になりました(福音館の月刊誌「たくさんのふしぎ」4月号です)。先日お伺いした会社の方が「孫に送りました」と言ってくださり、楽しく読んでもらえるかなあと心配しながらも、「わたし(ぼく)って生きものなんだ」と実感する小さな仲間が増えるといいなと期待しています。

この本を書くために生物学の基本を見直しているところに、それを後押ししてくれる仕事が入ってきました。以前から翻訳を続けている『エッセンシャル 細胞の分子生物学』という教科書が版を改め、その監訳が始まったのです。これはDNA、細胞などの基本についての教科書ですので、改めて勉強するのに最適です。このような外圧はありがたいものです。

新版を開いてまず気づいたことがあります。多様な生きものたちの中にいる人間について、これまでの版では「higher organism」となっていたところが「more complex organism」と変わっていたのです。“人間は複雑ではあるけれど、高等というわけではありません。生きものはそれぞれ。単純だからダメというものではないでしょう”と「生命誌絵巻」の説明では、いつもこのように言っています。欧米の研究者が著した分子生物学の教科書が、7版になってついに「高等」を止めたのです。心なしか他の部分も、他の生きものたちへの共感が感じられる書き方になっているような気がして、生命誌につながってきた気がしています。

それを読んでいると、40億年続いた生きものというシステムの面白さが更に明らかになっていると感じ、これが分かってきた21世紀は、生きものに目を向けることによって、未来が見えてくる時代だという気持ちが強くなります。機械さまさまでなく(やはりAIを意識しています)、生きもの主体で行く未来を考えたいと、改めて思いました。結局、いつも同じところに着地するなと思いながら。それにしても、基本を学び直すって大事ですね。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶