中村桂子のちょっと一言
2025.02.04
みんなで夢を見ている絵
高知県の山間にある人口3000人ほどの小さな町檮原の図書館に「生命誌絵巻」があって感激したことは、昨年の11月15日に書きました。その後、担当の方とメールのやりとりを楽しんでいるのですが、 今日、面白いお知らせがありました。
絵巻を見た小学校3年生の女の子が、「これは植物や動物たちが夢を見ている絵ですか」と聞いたのだそうです。「そうよね。きれいよね〜」と言って一緒に見て下さったとのこと。二人が話しているところを思い描くととても楽しくなりました。生きものたちみんなが夢を見ている世界っていいなと思いながら、改めて絵巻を眺め直すと、科学の眼で見ている時よりも優しい絵に見えてきました。そして、生きものの一つである私たち人間も、一人一人が夢を持って生きていける社会にしたいと思いました。ここで、子どもたちのためになどと偉そうなことを言わずに、子どもから学ぶのが一番よい方法かもしれません。
動物たちの夢について考えていたら、たまたま送られてきた科学誌に、こんな報告がありました。眠っている鳥が口をパクパクしていることは、これまでにもよく知られていましたが、これが何であるかを知りたいと、眠っている鳥のニューロンと筋肉活動を調べたというものです。さえずりをよく学ぶキンカチョウは、うたた寝中にも音の練習をしたり、それに別の音を加えたりしている時と同じ脳の動きが見られ、先天的なさえずりだけで練習をしないキバラオオタイランチョウにはそれがないという結果が得られたのだそうです。睡眠中の鳥の脳が活動しているからと言って、夢を見ていると言える訳ではありません。でも、さまざまな動物たちでレム睡眠とノンレム睡眠があることが分かってきていますので、調べていくと、鳥も夢を見ていることが分かるかもしれません。鳥だけでなく、絵巻の中には夢見る動物がたくさんいるということになるかもしれません。
研究が進むにつれて、今まで人間だけの能力と思っていたものが、そうではないことが分かり、人間と他の生きものの距離が近くなってきている感じがします。絵巻を「みんなで夢を見ている絵」として見る楽しさを大事にしていこうと思います。
絵巻を見た小学校3年生の女の子が、「これは植物や動物たちが夢を見ている絵ですか」と聞いたのだそうです。「そうよね。きれいよね〜」と言って一緒に見て下さったとのこと。二人が話しているところを思い描くととても楽しくなりました。生きものたちみんなが夢を見ている世界っていいなと思いながら、改めて絵巻を眺め直すと、科学の眼で見ている時よりも優しい絵に見えてきました。そして、生きものの一つである私たち人間も、一人一人が夢を持って生きていける社会にしたいと思いました。ここで、子どもたちのためになどと偉そうなことを言わずに、子どもから学ぶのが一番よい方法かもしれません。
動物たちの夢について考えていたら、たまたま送られてきた科学誌に、こんな報告がありました。眠っている鳥が口をパクパクしていることは、これまでにもよく知られていましたが、これが何であるかを知りたいと、眠っている鳥のニューロンと筋肉活動を調べたというものです。さえずりをよく学ぶキンカチョウは、うたた寝中にも音の練習をしたり、それに別の音を加えたりしている時と同じ脳の動きが見られ、先天的なさえずりだけで練習をしないキバラオオタイランチョウにはそれがないという結果が得られたのだそうです。睡眠中の鳥の脳が活動しているからと言って、夢を見ていると言える訳ではありません。でも、さまざまな動物たちでレム睡眠とノンレム睡眠があることが分かってきていますので、調べていくと、鳥も夢を見ていることが分かるかもしれません。鳥だけでなく、絵巻の中には夢見る動物がたくさんいるということになるかもしれません。
研究が進むにつれて、今まで人間だけの能力と思っていたものが、そうではないことが分かり、人間と他の生きものの距離が近くなってきている感じがします。絵巻を「みんなで夢を見ている絵」として見る楽しさを大事にしていこうと思います。
中村桂子 (名誉館長)
名誉館長よりご挨拶