1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

研究館より

中村桂子のちょっと一言

2021.01.15

新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さすがに私のようなのんびり屋でも「おめでとう」と元気よく言う気持ちになりにくい年始めですが、太陽や月の動きは変わらずですし、こんな時こそ変わらないものに眼を向けて落ち着いた暮らしをしようと思います。

面倒なことを考えずに無心になりたいと思う時の特効薬が二つあります。一つが「カルロス・クライバー」、もう一つが「寅さん」です。まったく違うと思われるでしょうし、その通りなのですが、楽しくゆったりした気分になれる効果は同じです。

まず寅さん。きっと一緒にいたら面倒な人でしょうけれど(さくらさんを労う気持ち大です)、観ている分にはなんとも魅力的です。そして、しばしば出てくる言葉をよく使わせていただきます。中でも活用するのは、「きりがありませんから」です。庭掃除を始めたら2時間ほどはあっという間にたってしまいます。さて、どこで止めようか。終わりは、「きりがありませんから」と言いながら切り上げることにしています。日常の仕事のほとんどはこれですね。大げさに言うなら、見切りと継続をいかに納得しながらやっていくか。なかなか味のある言葉だと思います。

寅さん、時に名言を吐きます。例えば、17歳になった甥の満男の「おじさん。人間てさ、人間は何のために生きてんのかな?」という質問への答えです。「難しいこと聞くな・・。何というかな、ああ生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるんじゃない?そのために生きてんじゃねえか。」成程です。寅さん、お勧めです。

長くなりますが、クライバーも書きますね。こちらはどなたも認める華麗な指揮ぶりです。音ももちろん素敵ですがやはり映像が必要です。オペレッタ「こうもり」と「バラの騎士」、それにベートーヴェンの交響曲4番と7番。ブラームスやモーツァルト、ウイーンのニューイヤーコンサートなど、その時の気分で選びます。細かいことを書くと、それこそきりがありませんから飛ばして、一つ飛び切りの気分転換だけ書かせて下さい。

実は、バーンスタインが、クライバーがよく振っているバイエルン放送交響楽団でベートーヴェンの5番を指揮した映像があるのですが、どう見てもクライバーを意識している。家では、「バーンスタインのクライバーごっこ」と名付けています。とても可愛らしく、ここ真似してると言いながら、最初から最後まで笑い通しという他にはない楽しみを味わえます。

日常のささやかな楽しみを書きましたが、こんなことで気持ちを明るくして、よい年にする努力をして行こうというところです。今年も是非いろいろお聞かせください。よろしくお願いいたします。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶