今号テーマ
生まれてからの時間
両親からもらったゲノムを読み解き、もてるだけの栄養をつかって個体となる準備をするのが「生まれるまでの時間」とすれば、「生まれてからの時間」は環境の中で生きものとして生きていく時間です。私たちの暮らす地球は、太陽系の惑星の一つであり、衛星である月とともにあります。丸い地球は、太陽との関わりで、砂漠や森林、寒冷地など、さまざまな環境をつくり、気候や季節の変動をもたらします。一方で、1日の日長は季節や地域で異なるものの、地球の自転周期は24時間でめぐります。多くの生きものは、暮らす環境を巧みに利用し、栄養をとりこみ、成長し、次の世代の子孫を残し、自らは死んでいきます。
今回は、生きものが生まれ落ちてから寿命を迎えるまでの、ライフステージの時間に注目して「生まれてからの時間」を考えます。
生まれてからの時間
生きものは地球のくり返しの時間に合わせた生き方を身につける一方で、自身は成長を続け、次世代を残し、やがて寿命を迎えるという一方向の時間を刻みます。「生まれる」「育つ」「暮らす」「老いる」「死ぬ(寿命)」のライフステージの時間に注目して「生まれてからの時間」をたどりましょう。
RESEARCH
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ウズラで見えた
脊椎動物が季節をよみとるしくみ吉村崇(名古屋大学)
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関わりが生みだす昆虫の社会性
三浦徹(北海道大学)
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小鳥がさえずるとき
脳内では何が起こっている?和多和宏(北海道大学大学院理学研究院生物科学分野)
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年を刻む冬眠物質
近藤宣昭(玉川大学)
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尾を非自己と見なすカエルの免疫系
井筒ゆみ(新潟大学)
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脳の情報処理とまばたきの関係を見る
中野珠実(大阪大学)
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幼虫が昇る「大人への階段」
大原裕也(静岡県立大学)
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生きものの時間に見る普遍と多様
吉村崇(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所)
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生涯はたらくニューロンを支える 脳の免疫担当細胞
石井さなえ(ペンシルバニア州立大学)
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線虫が親から子に伝える「記憶」
宇野雅晴(京都大学)
SCIENTIST LIBRARY
エリマキトカゲ
爬虫類は私たち哺乳類と同じ、胎児をつつむ羊膜をもち陸上で子供を育てる仲間です。爬虫類のなかでもトカゲの仲間は、約7千種と陸上動物の中では最も種類が多い頼もしい隣人です。しかし、変温動物で冬は苦手なのか日本の在来種はわずかに約30種。
身近なようで、なかなかお目にかかれないトカゲのなかまに紙工作で迫ります。