爬虫類は私たち哺乳類と同じ、胎児をつつむ羊膜をもち陸上で子供を育てる仲間です。爬虫類のなかでもトカゲの仲間は、約7千種と陸上動物の中では最も種類が多い頼もしい隣人です。しかし、変温動物で冬は苦手なのか日本の在来種はわずかに約30種。身近なようで、なかなかお目にかかれないトカゲのなかまに紙工作で迫ります。
トカゲの中で人気者と言えば、エリマキトカゲです。オーストラリア北部からパプアニューギニアに生息する固有種で、体長は80センチメートルほど、キノボリトカゲ科に属します。エリマキを広げ砂漠 を疾走するCMで有名になりましたが、実際は森林に暮らし、閉じたエリマキは枯れ葉に似せた擬態として身を隠すのに役立つようです。いよいよ危機が迫ると、鮮やかな色のエリマキを広げて捕食者を驚かし、二足で素早く逃げ去ります。また、縄張りやメスをめぐるオス同士の争いや求愛でもエリマキを誇示するので、エリマキが大きなのはオスです。
エリマキトカゲ
エリマキは、口を開くと広がります。発生過程を調べると、脊椎動物の特徴である咽頭胚にその秘密がありました。サカナではエラをつくる鰓弓が、陸上動物では咽頭弓と呼ばれ、陸での生活に合わせて変化しました。2番目の咽頭弓からできる舌骨は、陸での呼吸や飲み込みを助けます。その第2咽頭弓由来の上皮が、成長を続け、舌骨が入り込んでできたのがエリマキなので、口と同時に開くのです。食べ物は小さなアリやクモなので、食事の邪魔にはならないようです。
陸に適応した過程で思わぬ形質を身に付けたエリマキトカゲを 作って、進化の不思議と向き合ってください。
引用文献:Elife. 8 e44455 (2019) / 引用動画:How the dragon got its frill / 提供サイト:https://www.lanevol.org