日本の自然と文化が生み出した和紙を現代美術にとり入れ、
ひたすら和紙造形の可能性に挑戦し続けてきた伊部さん。
光と重力と和紙が出会って、はじめてできる形、心地よい空間。
和紙の伝統を突き抜けて、新しい世界を目指します。


1.AKAIITO99(1999)
練馬美術館
150m2×15mH/柑紙
2.AKAIITO 89(1989)
NHK京都放送局第1スタジオ
100m2×9mH/柑紙
3.朱夏-92(1992)
仙台141ビル
13mφ×32mH/柑ファイバー
4.はばたく-94(1994)
アトリウム アムステルダム
800m2×25mH/シルクペーパー
5.ASUKA-95(1995)
仙台141ビル
13mφ×32mH/柑紙・アクリルフィルム
(写真:1,4=ヘルムート・シュタインハウザー、2=大岩 衛、3=喜多章二、5=伊部京子)

和紙の良し悪しを判断するのに、紙の両端を持って明るいほうに掲げて見る。透かし紋様もないのに光に透かして見るなど、洋紙ではありえない。

この時の光源と紙と目の位置関係を、人体スケールに装置化したのが障子だ。部屋の内外に介在し、内部の人と外部の自然とを関係づけ、外光を変質させて室内をみたす。外と内が明と暗という対立ではなく、明中の暗、暗中の明として関わるのを体感し、安らいだ気分になる。

和紙は目と光源の間にヴェールとしておかれた時がいちばん美しい。

いつの頃からかこう思うようになり、その関係の構築をインスタレーションの手法としてきた。小さなものでは和紙の明かりのデザインから、近代建築のアトリウムに設置する巨大な作品まで、人と光源の間に介在する紙のより良き姿を求め続けている。

アトリウムに作品を吊るすと、ガラスの外の自然に呼応し、見えないエネルギーが見えてくる。連なった和紙のモチーフは光源からの距離に比例して影を増し、明暗のグラデーションができあがる。微妙に変化する曲面や直線は空間にある重力と支点からの距離を反映する。設置し終わった作品は、まるで初めからそこにあったようにその場になじみ、人の流れやわずかな空気の動きにしなやかに寄り添って、呼吸し始めるような気がする。

空気のざわめきや揺らぎが、視覚から体内にひろがる触覚として確かめられる時、私は安堵する。

いべ・きょうこ
1941年名古屋市生まれ。67年京都工芸繊維大学大学院修士課程修了、現同大学非常勤講師。和紙造形作家。82年(株)シオン設立、代表取締役。93年京都府文化功労賞受賞。98、99年SOFA Show(シカゴ)、2000年個展(東京、富士市、スコッツデールコンテンポラリーアートミュージアム)、University of Utah(アメリカ)客員教授など、国内外で、グループ展、アート・インスタレーション、講演多数。