キイロショウジョウバエの遺伝学を用いた発生研究のパイオニアであるエリック・ヴィーシャウス博士(プリンストン大学教授、1995年のノーベル賞受賞者)、トルディ・シュプバッハ博士(プリンストン大学教授)ご夫妻が、大阪で開催された日本発生生物学会年会のご出席に先立ち、生命誌研究館をご訪問くださいました。目的は、ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボでオオヒメグモの胚をご覧になること。小田研究員と秋山研究員がこの生命誌研究館で独自に実験系を確立したオオヒメグモは、今や実験生物として世界から注目を集めており、同じ節足動物の発生学者として、興味津々で実験室に向かわれました。
正にオオヒメグモの胚を観察しているとき、ちょうどメスグモが卵を産み始めました。日中に産卵することは珍しいので、思わぬ歓迎にお二人も大喜び。卵を卵嚢に包む様子を熱心にご覧になり、生物の面白さを改めて実感されたそうです。
ヴィーシャウス博士
「目の前で実際にクモの卵をみて、クムルスが動くところを見て、とても感動しました。対称性が破れるところから発生が始まるのは全ての生きものの始まりで、それが目の前でまさに見えたのはとても興奮しました」
いつもは、ショウジョウバエにヒトにも通じるものを探しますが、クモをみるとクモとヒトが似ているところが見えました。ヒトとクモが似ているところは、ハエとはまた異なりとても印象的で、とても楽しい経験になりました。」
ヴィーシャウス博士は、研究館のメンバーに向けて「ショウジョウバエのミオシンと細胞形態変化の力学」と題したレクチャーをしてくださり、ディスカッションの機会を持つことができました。 また、展示ホールを表現セクターのスタッフと一緒に回り、研究館らしい雰囲気も感じていただきました。
ヴィーシャウス博士
「ここには人と人の関係や私たちの社会、民族、祖先そして進化を全体として捉え、私たち人間とすべての生き物が関わりながら生きていることを学ぶことができる場があります。科学者と一般の人々との交流は一層大切になっていますが、ここは研究者だけではなくここに来るすべての人々、特に若い人にとてもよい環境だと思います。」
「ヴィーシャウス博士とシュプバッハ博士がクモ胚の発生に興味を持ってくださり来館が実現しました。実際にクモ胚をご覧になって、クモに発生生物学の新たなモデルとしてのポテンシャルがあることを実感していただけたようで、とてもよい機会になりました」とお誘いした小田研究員も感無量でした。