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2025.01.12

「人類はどこで間違えたのか」と安藤昌益思想の類似性について

参照記事「研究館より」

大久保 等

私は、江戸中期の思想家、安藤昌益が在住した八戸市に住む大久保等と申します(年金生活者です)。中村先生の「人類はどこで間違えたのか」を購読中です。驚いた事に第15節から第19節の内容は昌益の主張にとても似ています。昌益は「自然真営道」を著しました。それは江戸中期、戦乱が治まって江戸の人口が爆発的に増加し、近隣藩で江戸向けの大豆栽培から高価な換金作物に転作して、大豆が不足した江戸商人が地方藩に大豆栽培を要請して回り、八戸藩が応じた事です。農民に大豆栽培を強要して、大豆は連作できないので次々と山林焼き畑が行われた結果、生態系が壊れて猪が大繁殖して農作物を食い荒らして、領内で「猪飢饉」が発生しました。これを見た町医者の昌益は「人間が自然運行の調和を壊したから、自然からしっぺ返しを受けたのだ。人間の生産活動は自然運行と調和させなければいけない」と主張し、科学界全体では認められていませんが、一部研究者で世界初の環境論者だと言われています。何故昌益が科学界で不人気かと言えば、戦後GHQ職員で来日したEH・ノ-マン(彼はGHQ職員ながら共産主義シンパでした)が「忘れられた思想家」(岩波新書)で、昌益を「共産主義の前駆的思想家」と位置付けたからです。でも、文系の思想分類研究より自然科学中心の教育を受けた私からすれば(高専卒)、昌益は神道仏教批判や幕藩体制批判などしているものの、自然運行と人間生産活動の調和を主張した思想家であり、現代の、自然には分解不能なプラゴミ問題、PFAS問題、二酸化炭素増加による地球温暖化問題に通じる人間の生産活動による環境破壊を最初に提起した人です。ノーマン時代は環境問題が問題視されなかったので、当時の研究は間違った結論になりました。今こそ、昌益思想は再評価されるべきだと考え、是非、自然の中で生きる人間という観点から再研究していただけないかと思って投稿しました。

2025.01.15

1. 中村桂子(名誉館長)

大久保様
 安藤昌益の素晴らしさをお書き下さってありがとうございます。おっしゃる通り生活の基本である食べものを皆で作ることが、共同意識を持つ平等な社会につながるという点で、生命誌と重なると私も思っています。21世紀になって科学をもとに生命誌で考えることは、実は古代の人や平安時代、江戸時代など平和な時に大事なことを考えた先人の考えと重なることが多いのです。安藤昌益はそのお一人です。DNAはご存知なくとも、生きものをよく見て、生きものを大切にする生き方を考えれば、生命誌と同じになるということです。生命誌のよいところは、科学的事実が分かっているために、私のような凡人でも、昔の優れた人の考えと同じことが自然に出てくることだと思っています。そんなわけで、昔に学ぶことは大事にしていきます。よろしくお願いいたします。

                   中村桂子

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