研究
2024.10.29
ガットパージの成分
キキ
ナミアゲハの、ガットパージの成分はなんでしょうか。
同時に数匹を飼育していると、蛹化前に排泄するガットパージがありますが、同じタイミングで蛹化する他の幼虫はこれを避けて歩きます。
何か忌避する成分があるのでしょうか。
2024.10.29
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
ガットパージの成分についての研究例は見つけられませんでしたが、私が学生の頃に受けた昆虫学の講義では「消化管内の未消化物(葉のカスなど)をまとめて排出するのがガットパージである」と教わったように記憶しております。言うなれば餌のカスなので、ガットパージによる排泄物自体に有害な成分はないだろうと思います。
ただ、もし病気の個体がいた場合、ガットパージ排泄物には高濃度の病原体が含まれる可能性があるので、避けるという行動を獲得している可能性はあるのかもしれませんが、科学的には「避けるのかどうかについても不明」という回答が正確だと思います。
2024.10.30
2. キキ
早速のご回答、ありがとうございます、スッキリしました。
多頭飼育の場合、幼虫が突然死することがあったので、先生のおっしゃる通り、原因はまず死因にあるのかもしれません。
ところで、何らかの病因を持つ個体が蛹化までたどり着けるのでしょうか。
次から次に申し訳ございません、宜しくお願い致します。
2024.10.30
3. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
昆虫はそもそも生存期間が短い種が多いこともあり、病気について詳しく調べられてはいませんが、カイコの知見からいくつか推測ができます。
ウイルスが原因の病気の場合、ほとんどが終齢幼虫までに死んでしまうと思います。感染した幼虫は上の方へ移動して、死んだ後に体が溶けてウイルスを含む体液が下に落ちることで感染個体を増やすとされています。
カビが原因の病気の場合はいろいろなパターンがあると考えられています。幼虫期に体内に侵入しておいて、蛹になってから増殖するものもあると考えられています。蛹の表面には抗菌作用があるため、カビ系の病気の感染を防いでいるとされていますが、あらかじめ体内に侵入している場合には防ぐことができません。
いずれにしろ、昆虫が「病気になる原因を避ける」という行動をするのかどうかについては、科学的な知見はほとんどないと思います。
以上、ご参考になりましたら幸いです。