生命誌について
2023.11.22
吉田賢右先生に、ご質問です。
こう
はじめて“顧問室の窓”を開けましたところ
最新記事が「汗かきで、サバンナのヒトはいきのびた」で
早速、興味深く拝読しました。
この中の“ヒトの祖先が・・森林から・・サバンナの地上に
下り立った時に、彼らは毛皮を捨てて裸になり、代わりに全身
に汗腺を発達させた”とお話の論点は汗腺についてですが
このお話を読んだ後、日本までやってきた祖先の体毛について
疑問が湧きました。
日本までやってきた祖先のルートは、アフリカを北上後、後世
、文明の十字路と呼ばれるエリアを右折、南アジアを一路東へ
進み、東南アジアを北上後 寒冷な東シベリアに到達、長期間
滞在後に南下、日本にやってきた・・・というイメージですが
寒冷なシベリア時代、体毛はどうなっていたのでしょう。
世界の中で日本人は小柄ですが、その理由は“祖先がシベリア
にいた頃、寒さから身を守るため、体を小柄にし二重瞼を一重
にする・鼻を小さくするなど体の凹凸を少なくし表面積を減ら
して、熱が逃げるのを防いだ”と認識しているのですが
その時代、体毛は・・・
①環境に適合し、雪男の想像図のように毛皮を復活させた後、
南下で温帯に入るにつれ毛皮を薄くしていった・・・のか
②寒冷地時代も裸だったが、火や衣類・住居など文化の発達で
寒さをしのいだ・・・のか
③その他、いろいろ推測されている・・・のか
現在の科学では、どんな案が有力視されているのでしょうか。
シベリアの永久凍土からマンモス発見という話はありますが
アイスマン発見という報道は聞いたことがありませんので
あくまでも推論になるでしょうが、心当たりがお有りでしたら
是非、教えて下さい。
2023.11.22
1. 吉田賢右(顧問)
こうさま
ありがとうございます。
ヒトが北方進出ができたのは、衣(動物の毛皮)を身にまとうことができてからだと思います。ヒトが毛深くなったわけではありません。火も寒冷対策としては有効ですが、火の使用は140万年よりも前から始まっているので、これが北方進出のきっかけとなったわけではありません。ヒトシラミには衣シラミと頭シラミの2つの亜種がありますが、衣シラミの亜種が生じたのは約7万年前という遺伝子からの推定があります。また、衣を縫うための骨製の針が発見されています。
吉田
2023.11.25
2. こう
吉田先生
ありがとうございます。
生きものを観ていますと、生涯生きてゆくために活動の許容範囲の環境で
食べ物を探し続けています。
確かジャレド・ダイアモンドだったか、生きものの移動は気候の似ている
水平(経度)方向が、ごく自然に容易に行われるということでしたが
①森から出て北上した時と ②東南アジアからシベリアまで北上した時は
余程の食料難があったと予想され、大きな危険を冒してまで
安定して食料を確保できる旅をし続けたと思います。
ただ、移動に伴う大きな環境変化は大きな課題となって立ち塞がり、都度
課題を克服するにつれ、身体や前頭葉が進化していったのでしょうね。
現在の日本人は、買い物で簡単に食べものを手に入れられる反面
生きものの基本的な野生能力“食べものを探し手に入れる絶対能力”は
格段に弱まっています。
今、ウクライナのことで表面化した輸入穀物不足と減少し続ける農家の
収穫量の減少に備えてか、今月初め ようやく農林水産省が重い腰をあげ
深刻な食料不足時、サツマイモやコメなど カロリーの高い作物への転換を
指示できる制度を検討してゆくことになったそうですが
肝心なことは、我々一人一人の野生食物を含めた食料確保の意識と行動。
9月に行われた高槻・30周年記念シンポジウムの締めくくりに
吉田先生が登壇され、山極・小川・永田、3氏の鼎談に私も入りたかったと
お話されていたのが印象的でしたが、これからも“顧問室の窓”や
この“みんなの広場”で、現在の日本人が抱えている問題や今後予測される
課題の解決を示唆する人類進化の知恵もご披露頂けたら有難いです。