生命誌について
2023.10.04
中村先生の“視点論点”
こう
私は、電灯の黒い布を外した日から数年たって生まれました。
思い出せる幼少期の部屋には、ちゃぶ台と笠付きの裸電球、
コテ型電気アイロンや足踏みミシン、箪笥の上に木製ラジオ。
夕暮れ頃に流れてくる“尋ね人”や“お父さんはお人好し”
“とんち教室”・・・など、なんとなく聞こえていました。
さすがに、毎日の食事がイモばかりの思い出はありませんが
麦飯とお汁に野菜のおかず、こうこ(こうのもの)があったり
なかったり、おかずがたまに魚だと大のごちそうでした。
底冷えのする冬の朝4時頃、羽釜に火をつける母親を布団の
中からふと見えたことがあり、質素な暮らしでしたが有難く
その頃の衣食住が今も私の価値ベースになっています。
さて、私の思い出にはない“イモが主食の生活が来る”と
いう現実的な予想がされています。
① 2050年、国内の農業人口が現状より8割減る。
16~21年の収穫量の減少がそのまま続くと
コメは6割減・ダイコンは半減・ホウレンソウは消滅。
② 世界で人口が増え、格段の国民数を持つG20諸国の
生活水準が上がってくると、輸入依存が限界になる。
飽食の時代は終わりに近づいています。
いまからはベランダや庭で、いずれは通える距離にある一坪
農園や耕作放棄地で休みに食材を作るしかなくなりますね。
生命誌絵巻の生きものの世界に入っていけば
昼行性の動物の場合、空が白み始める時から日が落ちるまで
終日餌を探し食べる。育児に良い季節になれば子供のために
いつもの数倍の餌を探し持ち帰っています。
いまの日本社会なんかおかしい。
消費者という言葉もおかしい。我々は生活者なのに。
いまこそ生きることの原点に立って
これからの生活を考える重要な時だと思います。
2023.10.04
1. 中村桂子(名誉館長)
こうさま
投資社会にして景気をよくするのだそうですが、お金は食べられませんし、今やそのお金すらなしの数字だけでことが進んでいるのですから、何を考えているのかと思いますね。
キューバが閉鎖されたときに、市民がベランダも車庫も畑にして、食べ物をつくりましたね。肥料も入ってこないので有機栽培、皆が取れたての野菜を
食べて健康になったということでした。危機をプラスに変えた例としてあげられます。日本もそのくらいの危機意識をもって社会を立て直すとよいと思うのですが。
その方が明るい気持ちになるのではないでしょうか。
中村桂子