1. トップ
  2. 語り合う
  3. みんなの広場
  4. 人を育む研究とオープンラボを称賛します

みんなの広場

研究

2023.07.05

人を育む研究とオープンラボを称賛します

獣医師的な音屋

非常に面白く、興味深く、内容も濃厚で、目から鱗の記事でした!

長年プランターで育てているミカンの木に毎年アゲハが産卵するので、成長を見守り、羽化して飛び立つのを楽しんでいたのですが、今年は『蛹の色に関する検証』をしてみようと思い立ち、幼虫を室内で飼育し、試行錯誤しながら実験を行っている所でした。
再現性の確保という観点から、ダイソーで入手できる共通の実験道具などはある程度調達しましたが、仕事の合間にワンルームのアパートで出来る事など、小学生の自由研究にも及ばない趣味でしかありません。観察日記的なブログは数多くありますが、ここまで本格的な研究記事に出会ったのは初めてで、幼虫の人工飼料が存在する事には特に驚きました。成虫がはばたくのに十分な温度や光量などを的確に把握されていたことも、とても勉強になりました。
もちろん、遺伝子レベルで生物科学に取り組んでいらっしゃる皆様の研究には遠く及びませんし、私の疑問など昆虫学会ではとうに解明されている事なのかもしれません。蛹の色は足場の質感によるものなのか、周囲の色を感知して擬態するものなのか、だとすれば蛹のどの部位で色を感知するのか…、そのような疑問に納得するために取り組んでみようと思っていますが、北海道は越冬蛹が羽化する春蝶と、それが産卵して越冬蛹になる2回しかチャンスがないので数年かかりそうですし、個人レベルでは有意と言えるほどの検体数を確保することは出来そうにありません。ちゃんとした設備と環境の下で、そうした実験に取り組む人生も楽しかったかなと、皆様の事を少し羨ましく思います。

子供たちは、蛹化や羽化の瞬間を目撃するだけでも、生命の神秘に対して大きな刺激を受けます。皆さまが開催するオープンラボは、『人』を育む上で非常に大きな意義を持つと思います。尊敬します。これからも、地道な研究に邁進していってくださいね!

2023.07.12

1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

気まぐれなチョウたちに実験として再現性高く行動してもらうための工夫は、「解る人には一番面白いところ」と思って作成したコンテンツでしたので、このような感想を頂けてとても嬉しいです。いわゆる“モデル生物”ではない昆虫を扱う研究では、目的に合わせた実験器具のようなものは市販されていませんので、我々も100円ショップやホームセンターで販売されているものをよく使いますし、自作することも多いです。

日本の昆虫学は、多くのマニアの方々による詳細な観察が発展に貢献してきたという側面がありますので、個人的にそのような方々を“アマチュア科学者”と呼んでいます。興味を持たれている現象について、観察を積み上げていって頂ければと思います。北海道だからこその観察や研究アイデアが生まれる可能性があると信じております。
ちなみに、私の故郷の青森で採集したナミアゲハに、ミカンとカラスザンショウを自由に選べる状態で産卵させたとき、7:3位でカラスザンショウを好んでいました。大阪のナミアゲハは反対で、6:4位でミカンを好んでいました。チョウの“好み”にも地域差があるのではないかと想像しています。同種内でも、北国に住む集団の特徴のようなものもあるのではないでしょうか。

アゲハチョウのサナギの色に与える影響については、平賀壮太先生の「蝶・サナギの謎」という本をおすすめします。平賀先生は分子生物学の大御所ですが、大学を定年退官された後にご自宅でアゲハチョウの研究を行われて、蛹の体色に与える影響について論文まで書かれたという方です。論文が出たときに「僕もついに昆虫学者になれたんだよ」と無邪気に笑っていらしたのを忘れられません。ご自宅で行われた研究の内容をまとめられたのが、上記の本になります。

また、私の恩師も大学を定年退官された後に、現役時代とは全く異なる研究をご自宅で行い、精力的に発表していらっしゃいます。もし機会がありましたら、安藤喜一先生の「カマキリに学ぶ」という本をお手にとって頂ければと思います。緻密な実験と論理的に突き詰めていかれる様子に圧倒されました。

これからも、科学を音楽や映画と同じくらい身近な文化として愉しんで頂けると嬉しいです。

コメントする

お名前(ニックネーム可)
メールアドレス
コメント
アイコン
  • 入力いただいた情報は自動で掲載されません。
    当館の担当者が内容を確認の上、後日掲載させていただきます。
    掲載の折にはメールでご連絡いたします。
  • 内容によっては掲載されない場合があります。
  • メールアドレスは上記以外の目的に使用いたしません。