生命誌について
2022.10.25
不断の努力で権利を守ること
やっちゃん
社会へ出てからの私は、日本国憲法の前文や9条の凜とした姿に守られてきました。私の味方は日本国憲法だと思えば、やるべき事や進むべき道が指し示されると考えてきました。
ところが、21世紀にもなって、どうやらこれが怪しい!憲法が、ではなく、日本の社会がどうも違う。どうやら、敗戦後の「与えられた民主主義」を「自分たちの手で獲得する民主主義」として、見直して行く動きのようです。ターニングポイントかも知れません。改憲の声も、戦前回帰や、復古調の勇ましいものまで、いろいろです。敗戦から80年近く経って、日本の道筋を巡るあれこれが一度に吹き出てきたのでしょうか。
戦後すぐの論調はどうかと、1961年出版の『現代知性文庫 坂西志保』を読みました。曰く、与えられたものでも自ら獲得したものでも、不断に守り続ける努力なしには、所詮絵に描いた餅であると言うこと。一人一人がわが事として自分の生活の中で実践して行くほかないとありました。そして、一人一人が自分の頭で考えて行動して行くことを、とりわけ女性に求めていました。戦前の家父長制のもとで隷属を強いられていた日本の女性にとっては驚きであったことでしょう。坂西志保の時代から60年経ちました。時代のうねりはいくつかありましたが、今また大きな転換期のようです。
多くの人々の手で紡ぎ出された民主主義が、本当の意味で国に根付くか。日本は大きな実験を行っているように私には思えてなりません。「より良い方向へ向かって生きてゆきたい」「生きものとして、進化したい」一人の人間として考えたことでした。
2022.10.25
1. 中村桂子(名誉館長)
やっちゃんさま
たくさん考えなければならないことがあるこの頃ですね。
現在の憲法をよく与えられたもの、時には押しつけられたものという方がありますが、私はそうは思っていません。第二次大戦は市民を巻き込み、核爆弾まで使ったとんでもない戦争でした。こんなことをしていたら人間滅びるしかないのではないか。敗戦国である日本人はもちろん、戦勝国の人もそう感じたでしょう。その思いが生んだのが日本国憲法だと思います。一見敗戦国に戦争をさせない意図のように見えますが、奥にはもう戦争はしたくないという気持ちが込められていると思っています。人間忘れっぽいので、時間が経ってあの時のことを忘れているとしか思えません。
自分のものとして考えるようにしたいと思っています。
中村桂子
2022.10.27
2. やっちゃん
自分のものとして考える。本当にそう思います。76年前の国会で誕生した日本国憲法を、今もう一度選びます。