生命誌について
2021.04.01
タンパク質の驚きと不思議
ミッキー
永田和宏館長の著書「タンパク質の一生」を勉強させて頂きました。沢山の“驚き”に満ちた素敵な本だと思いました。驚きの仕組みは例えば、「針穴通しの名人芸」と題された、リボソームがmRNAを捉まえてペプチドに翻訳しながら小胞体に注入する仕組み。翻訳されたポリペプチドが種々のシャペロンの介助で、疎水性部分を包み込むような正しい立体構造のタンパク質を作る仕組み。また、小胞体などの組織に向かうべきタンパク質には、宛先が遺伝子に書かれていることに驚きました。また、膜タンパク質であるATP合成酵素が回転していることを吉田賢右顧問が世界で初めて示されたことを知り、素晴らしいと思いました。他にも驚きの仕組みが沢山解説され、メモを取りながら読んだので時間は随分かかりましたが、まるで物語を読むかの如く読み進められたのは、この本の魅力の一つだと思いました。
興味深かったのは、タンパク質による「タンパク質の品質管理」です。例えば、小胞体内で不良タンパク質が増加した時に、核にシグナルを送ってその発現をとめたり、修理シャペロンの発現を誘導する仕組み。それでもダメな場合は、サイトゾルに戻してプロテアソームでアミノ酸に分解して再利用できるようにするなど、「品質管理」には生命維持のために重要な様々な仕組みがあることに驚きました。そして、そんな仕組みを学べば学ぶほど驚きは増え、驚きは、どうしてそんなことができるのか?という不思議になりました。不思議が増えることはとても楽しいことだと思いました。まだまだ理解できてないことは沢山ありますが、これからも不思議が増えて行けば嬉しいと思います。ありがとうございました。
2021.04.01
1. 永田和宏(館長)
『タンパク質の一生』をお読みいただき、うれしいことでした。タンパク質にも私たちと同じように一生がある。それはさまざまの一生であり、波乱にとんだものでもあることを知っていただいたことだけでもうれしいことですが、特にこの本をお読みいただき、「不思議が増えることはとても楽しいことだと思いました」という感想は、我が意を得たりという気がしました。そう、読んでよくわかったというより、読んでいっそう不思議が増えた、問いが増えたと感じていただけるのはありがたいことです。JT生命誌研究館の基本は、「問いを発掘する場」だと、考えております。もし興味を持たれましたら『生命の内と外』もお読みいただけるとうれしいことです。生命は外界から区画されなければ生命として成立しませんが、完全に分けられてしまうとこれも生命として生きていけない。「閉じつつ開く」という困難なミッションを生命はいかに克服しているか、お楽しみいただければ幸いです。