研究
2020.08.27
質問です!(昆虫食性進化研究室)
相模のラクダ
アゲハ蝶の「前足」が「葉」をたたき、食草か、どうかを素早く見分けられる「センサー」があることは、本当に驚きました。ということは、母親のアゲハ蝶は、確率良く、後世に子孫を残せる、DNAプログラムされているのですネ! 母親は、逆に言えば、試行錯誤して、無駄な時間を懸けなくても、産まれてくる子供が「食べられる食草」を短時間で、「食草」を探せて、良くなるわけですね。
ここで、質問です:①大体、その「時間」は、何パーセントくらいに減少できるのでしょうか?(データがすでに発表されておられるなら失礼。) ②もし、その自動組み込みされている、DNAの、並びに異常が生じたら、アゲハ蝶は、「進化」の方向へ行く場合と、「衰退(絶滅)」の方向の、どちらの方向の道が選択肢として、可能性が大きいですか?また、その「均衡」が保たれますか? ③アゲハ蝶を家の「庭」に飛んでいるのを、2日程前に、本当に(偶然?)私たち夫婦で発見しました。(私が妻に、ほらーほら、アゲハ蝶がこんな所に飛んでいるゾ・・・と叫んだのを覚えているからです。ということは、食草が付近にある可能性が、少しはあるのでしょうか?
以上、子供並の「質問」で恐縮です。質問の語句に間違いがあれば、正しい語句に置き換えて推論し、ご回答いただければ幸いです。中高生なら、これくらいな質問があると思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
※8月の生命誌の催し「研究者の目で生きものを見てみよう 」にお寄せいただいたご質問、ご感想です。
2020.08.27
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
コンテンツを楽しんでいただき、色々と考察されるきっかけにしていただけたことを嬉しく思います。
ナミアゲハの場合、自然界で成虫が生きているのは一週間くらいと考えられています。幼虫のためにどの食草を選んだら良いのか、練習を重ねて徐々に上達する時間はありませんので、産まれながらに知っている必要があります。このような、ゲノムにプログラムとして書き込まれている行動のことを「本能」と呼びます。
1. 産まれながらにして知っているので、あえてパーセンテージで表せば100%の削減になると思います。試行錯誤の時間はゼロですので。
2. 生物学用語の「進化」には「改善・向上・発展」といった「良くなる」という意味は含まれません。世代を重ねるごとに蓄積される変化は全て「進化」ですので、人間の感覚で「劣化・衰退」と感じる変化も「進化」です。絶滅した場合は、「劣化や衰退」が起きたのではなく、あくまでもその生物が生息する環境では子孫を残せなかっただけです。子孫を残せずに集団が消滅することを「自然淘汰」を受けたと言います。味覚に変化が起きた場合、植物に対する好みが変わって食草とする植物の選択に変化が生じると、やがて違う種へと変化していく可能性があると考えられています。この食草転換を出発点とする種分化に、どのようなストーリーが隠されているのか解明するのが、我々の主要な研究テーマです。
3. 台風などの強風で飛ばされて、本来なら生息しないはずの蝶が観察れることも稀にあります(迷蝶と言います)が、おそらくご自宅周辺のどこかにアゲハチョウが育つ環境があるという可能性の方が高いと思います。