生命誌について
2020.07.20
細胞の不思議
ミッキー
永田館長の著書「細胞の不思議」を拝読いたしました。興味深い内容で大変勉強になりました。細胞膜の脂質二重層の説明にシャボン玉が出てきたのには驚きましたが、“膜”が果たす役割の大きさを知ることができました。脂質二重層が二重になる核膜の発生由来も合点がいきました。
種々の細胞小器官の働きについても、タンパク質の以下のような一連の流れの中で解説されていたので良く理解できました。
●核から放出されたmRNAを、小胞体の粗面にあるリボソームが、tRNAの運ぶアミノ酸を捕らえて紐状のタンパク質に翻訳する。それを小胞体の中に注入すると、分子シャペロンが3次元構造に折りたたみ、小胞がそれを包んでゴルジ体に運ぶ。そこで行先の荷札がつけられた小胞は、微小管の上を二本足で“歩く”タンパク質「キネシン」によって目的地に運ばれ、時には細胞外に分泌されるとのこと。
でも、この複雑な仕組みは、どのようにしてできたのか?個々の小器官は別々にあるのに全体は繋がっている!読めば読むほど細胞の不思議が湧いてくる素敵な本だと思いました。
他にも、小腸上皮細胞がグルコースを吸収するのに、ATPのエネルギーを使うのではなく、共輸送と呼ばれるNa+の濃度勾配を利用するのには驚きました。細胞はなんて賢いのだろうかと思いました。
私は、生命誌研究館にある「細胞展」の部屋が好きで、パネルや映像を眺めながら細胞の中の小さな宇宙を感じるのが好きです。永田館長のご本を読んで、さらに深いレベルで小さな宇宙を楽しめるようになったと思います。ありがとうございます。
2020.07.20
1. 永田和宏(館長)
ミッキーさま
私の『細胞の不思議』をお読みくださり、感想をお寄せいただいてありがとうございました。それぞれの感想をうれしく拝見しましたが、「読めば読むほど細胞の不思議が湧いてくる」というところは、まさに私がこの本を書いた意味でもありましたので、とりわけうれしく読ませていただきました。
もし、これで興味をお持ちいただき、もう少し先をとお思いでしたら、岩波新書の『タンパク質の一生』にも目を通していただけるとうれしく存じます。生まれてから死ぬまで、タンパク質にも波乱にみちた一生がありますが、『細胞の不思議』よりはもう少し専門的になります。もちろん理系以外の方にお読みいただきたいと思い、書いたものです。
研究館にもお出でいただいているようでうれしいことです。館長として初めて挨拶をしたビデオが下記で見られますので、お時間のあるときに、どうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=cXucUXB7cVQ&feature=youtu.be
これからもぜひ生命誌研究館の応援団になっていただきますようお願いします。
永田和宏