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2020.03.31

痒み

A.M.

日常,血液透析に従事している一透析医です.

慢性腎臓病により腎機能が低下して、血液透析治療を受けている患者さんの約40%のかたが,様々な治療薬や透析方法にも拘わらず痒みに苦しんでおります.痒みの病態生理がまだあまり解明されていないことより痒みについて興味をもち研究らしきことをしてまいりました.

陸棲生物に比べて水棲生物には掻把行動がみられないことが多いことから,「痒みは3憶8千年前に生物が陸上に上がった時から出現した症状ではないか.」という仮説を立てております.この時に新しくできた臓器は腎臓、肺、副甲状腺、肋骨などが挙げられていると思います.

重力のある陸上は浮力のある水中に比べて、生体が同じ距離を移動するのに6倍のエネルギ-が必要であるといわれています。よって,さまざまな皮膚に対する刺激を痛みに近い皮膚刺激として受容して逃避行動をとってしまうと,陸上ではエネルギ-を使い果たしてしまうため、エネルギ-消費の少ない掻把行動をとる痒み刺激として受容するように進化したのではないかと考えております.つまり、エネルギ-を節約するために痛みとは異なる,痒みが出現したのではないかと推測しております。

生物史や上陸の観点から,痒みと何か関連する事柄などがあれば御教示いただければ幸いです.

2020.03.31

1. 星野敬子(表現を通して生きものを考えるセクター)

大変興味深いお考えをご投稿くださりありがとうございます。日々真摯に患者さんに向き合われているご様子が伝わってまいりました。

残念ながら痒みの専門家がおりませんため、ご参考になるようなことをお伝えできませんが、上陸という観点で、当館で飼育展示している肺魚のしぐさが頭をよぎりました。肺魚のアボカドくんは、ぶつけて鼻の辺りの皮膚がはげてしまったとき、その部分を水槽のガラスに擦り付けるような仕草をするのを時々目にします。ヒトの私たちが傷が治りかけたときにそこを痒く感じるような感覚で「アボカドくんも痒いのかしら?」などと見ています。上陸と痒みの起源がもしも肺魚にあるならおもしろいと思いお知らせしました。

ご投稿を機に、痛みとは異なる痒みという存在に興味をもちました。またお考えのことがありましたら、ぜひお知らせください。

2020.04.10

2. A.M.

お返事ありがとうございます。

鳥羽水族館にいるジュゴンのセレナ(水棲から陸棲,また水棲に戻った)は,ひれで胸を掻くようなしぐさをしておりました。

また,上越水族館の肺魚(アフリカ?)をビデオを撮影したのですが,呼吸するところばかりに注目していて,星野さんがご指摘の肺魚が鼻のあたりの皮膚を水槽のガラスに擦り付けていることまでは気づきませんでした。ビデオが残っているので、早速見かえしてみようと思います。

2020.04.10

3. 星野敬子(表現を通して生きものを考えるセクター)

ジュゴンのセレナさんも掻くようなしぐさをされていたのですね!

新型コロナウイルス感染拡大防止のため在宅勤務となり、しばらくアボカドくんに会えませんが、またもし何か観察して気づくことがありましたらお便りいたします。より一層お体大切にお過ごしください。

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