展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【多様性と共通性から見直す】
2017年2月1日
年が明けて1月14日に生命誌研究館を会場に、北大阪ミュージアム・ネットワークのシンポジウムがありました。北大阪の7市3町の博物館53館のネットワークです。一般に博物館というと博物館法という法律のもとに登録された施設を指しますが、ここではもう少し広い意味でのミュージアムです。博物館には、資料(生きものも)の収集や保存(育成も)などの役割があり、動物園や水族館も含まれます。そういう意味では、生命誌研究館は博物館ではありませんし、肺魚がいても水族館ではなく、ナナフシがいても昆虫館ではありません。ですので、博物館の仲間に入れていただくのは、遠慮がある一方で、ちょっと違うんだという気持ちもあり、これまでは個人的に少し距離をおいていたのです。
シンポジウムは、ネットワークの中の自然系とされる自然博物館や水族館、自然と触れ合う教室や体験型施設などの8つの施設が、一堂に会して活動報告をして、討論するというものでした。展示をしたり、催しをしたりという活動は似ていますが目的は様々で、特徴を活かして工夫する努力が伝わりました。でも、それぞれの館長さんのお話を聞いているうちに、ある共通性に気づきました。それは、標本であったり、生きものであったり、里山や公園の自然といった時間をかけてそこにあるものに、責任と愛情をもって向き合う姿勢でした。これはまさに生命誌の想いにつながります。ミュージアムという形態の類似性での集まりでしたが、同じなのは「館」ではなく「誌」なのだとわかり、お仲間になれて光栄な気持ちになりました。
では、生命誌との違いはと言えば、博物館は資料を収集して見せることが役割ですが、ここは見えないものを見えるようにする場所だと、改めて考えています。ゲノムも進化も見ることはできないので、何を伝えたいかを考えて表現を試みています。肺魚やナナフシの「生きている」姿から伝えたいのは進化や発生のしくみです。今、私が挑戦したいことの一つが、ゲノムの全体像の表現です。そういうと大げさですが、コンピュータの中にたくさんのデータがあり、なんとなくこんなものではないかというイメージはあるのですが、形にできずにいます。もっと多くの人とイメージを共有することが必要だと感じます。今年こそ、もう一歩実現に近づきたいと思った年頭でした。