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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【大きな生きものの最初の一歩】

2016年12月15日

齊藤 わか

我が家の飼い犬には、季節の移り変わりを感じさせてくれる不思議な習慣があります。まず、庭のどこかに密生するチヂミザサの種子を大量にくっつけてくること(もとは白犬なのに黒犬に見えるほど)。寒い夜には必ず、境内で掃き集めた落ち葉をためた巨大な袋に潜り込むこと(乾いた落ち葉は暖かいようです)。私たち動物は、植物に包まれて暮らしているんだなあと思わずにいられません。

地球上で最も種数が多い生物グループは動物(中でも昆虫)ですが、その住処である森や草原は植物が作ります。陸のさまざまな生息地に進出し、総重量としては昆虫をはるかに上回るほど繁茂し、かつ巨大化・長寿命化した生きもののグループは植物をおいて他にありません。ちなみに最も良く知られる巨樹といえば北アメリカ西部に生息する針葉樹・セコイアの仲間で、現存で最大のものは通天閣より高いようです*。その巨樹のてっぺんは、かつては何もない緑の砂漠だと考えられていましたが、近年の研究では新種も含めてさまざまな生物の住処になっていることも分かってきています。

多細胞生物としてのメリットを最大限に活用し、陸上生態系の揺るがぬ基盤となった植物。その大きさの秘密がどこにあるのかを探るのは、学生時代からの私の関心でもありました。少し気が早いですが、次のジャーナルでは念願かなって、植物の進化に迫る研究を紹介する予定です。植物の祖先がどのようにして多細胞として生き始め、陸上での暮らし方を確立していったのか。新しい芽吹きの季節を楽しみに、わくわくしながら編集を進めています。

*Koch et al. 2004, "The limits to tree height" Nature 428, 851-854

[ 齊藤 わか ]

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