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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【やりくりする】

板橋涼子
 新年度です。SICPセクターには新人の和田さんが加わり、新しいSICPの渦ができそうだなあとワクワクしています。私が生命誌研究館に飛び込んだのは4年前。入った当初、生命誌の枠の中で何を伝えるべきか、そこに自分の軸をどう重ねていけばいいのか大きく悩んでいました(今も悩むところですが)。研究館での時間を重ねていくうちに、生物の教科書では読みとれなかった「生きものらしさ」を、季刊誌や展示などをつくる中で自分なりに発見していきました。それは「やりくり上手」だったり「しなやかさ」だったり、「したたか」だったり、ずっと変わらない部分があり、変わる部分もあり、弱い部分もあるけど強い部分もあって、そのバランスが大事だったり。38億年も続いてきた秘訣はそこにあると思います。すごい実績ですよね。
 「生きもの上陸大作戦(仮)」展の企画を進める中でも、生きものに習いたいところがたくさん見えてきました。陸上は、水中では経験できない乾燥、紫外線、重力などのさまざまな過酷な環境にさらされます。「やりくり上手」な生きものは、今持っているものを少しずつ陸用に変えながら、最終的に陸地へと進出しました。例えば魚はヒレを四肢に変え、昆虫は付属肢を歩脚や翅などに変えました。陸上植物が、葉緑体を中心体の代わりに用いて細胞分裂するのもその一つです。このように、限りあるものを使って最適な形へともっていく生きものの工夫は素晴らしい!と感じてしまいます。人間の考えなら、新しい環境に慣れるために、あれもこれもと新しい機能をつけたがりますが、それでは続いていかないと思います。あるものを最大限に活用していく、そこら辺を見習って暮らしたいというのが、私の日常生活の秘かな目標です(要は無駄遣いをしないということです)。

 [ 板橋涼子 ]

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