展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【私の仕事 その1】
遠山さんの表現スタッフ日記にも登場した「細胞くん」は、この編み物の糸にちょっと似ている気がします。というのは、母親の体内まで時を遡れば、人は誰もがたった一つの細胞(受精卵)として生きているのですが、細胞が二つに増え、四つに増え・・増えた細胞は時に性質を変え時には死ぬことで、色々なかたちがつくられ、色々な「生き方」が実現可能だからです。工夫は違いますが、はじめの“一つの細胞”と“一本の糸”は似た可能性というか、似た大きな柔軟性を秘めていて魅力が感じられないでしょうか。 しかし糸のように人も始めの細胞に戻って形作りからやり直し、というのは不可能なことです。そうではなく私たちは前に進みます。増えた細胞がさらに増え方を工夫して特別な細胞(卵子と精子)をつくり、命を新しい一つの細胞として次世代につなげます。ですから、雄と雌がいる限り、一つの細胞がもつ柔軟性は、一本の糸のように大きいどころではなく、未来へ向けてなんと果てしないことでしょうか!この工夫にこそ、心揺さぶられずにはいられません。 糸が編み方という工夫ならば、細胞はどんな工夫でこのロマンチックなしくみを行うのでしょう?特別な増え方って?研究はたくさんあります。それらをどのように”工夫して”伝えるか、これが専ら私のテーマです。 [坂東明日佳] |