展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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一言で「生きもの好きの人」と言ってもさまざまなタイプがありますよね。「形づくり」に興味がある人、「歴史」に興味がある人、「関係性」に興味がある人、「しくみ」に興味がある人、「描かれ方」に興味がある人などなど・・・。生命誌というコンセプトのもとに集まっているSICPのメンバーも見事なまでに住み分けがありまして、それぞれが得意分野を持っています。私の興味は断然生きものの「しくみ」です。好きなものは好きということで、うまく言葉で説明することが難しいのですが、これだけ多様で、しかも38億年も続いてきた生きもの全てが細胞という共通のしくみをもっているなんて・・・考えるだけで胸がいっぱいになってしまいます(笑)。
私たちの体をつくる細胞は生命の最小単位といわれています。もちろん、約38億年前に生まれた最初の生命体もたったひとつの細胞でした。フックが顕微鏡下でようやく見える細胞が発見してから300年以上経ちますが、この間に多くの科学者が、細胞が生きているという状態を支える細胞内の「しくみ」を明らかにしてきました。
みなさんは細胞に対してどのような印象をお持ちでしょうか?細胞膜で覆われていて、核があって、ミトコンドリアやゴルジ体があって、原形質流動というくらいだから隙間があって・・・と右の絵の細胞を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。私たちがよくみかけるこのような図版は説明にはとても適したものです。しかし、細胞内のさまざまな分子の濃度から考えると、実際の細胞はもっとタンパク質や脂質などのさまざまな分子でぎゅうぎゅう詰めの状態なはずです。みっしり詰まった細胞の中を分子は縦横無尽に駆けめぐるわけですから、きっといろんな音がしてとても騒々しいだろうなと思わず想像してしまいます。
そんなことを想像するのも、実は今まさに、そのようなみっしり詰まった細胞の姿を、さまざまな分子が同時多発的に複雑に絡み合いながら生きているという細胞を、インタラクティブな映像で表現しようと挑戦しているからです。スタッフの間では「細胞くん」という愛称で呼ばれているこの映像は、来年3月には「ミクロのインタラクティブラボ」として館内に登場する予定です。ぜひ『細胞くん』のなかに広がる分子の世界をのぞきにいらしてください。
[遠山真理]
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