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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【季刊『生命誌』の季節】

2002年4月15日

工藤光子
 今年の桜はやけに早くて、いつもに比べると2週間ほどずれている感じである。一斉に咲いて空気の色を変える桜は、季節の到来を強く印象づけるのだが、今年は時間の推移を余計に早く感じることになったわけだ。
 季刊『生命誌』という名前には、前任者の卓見を思う。年4回発行するということを四季になぞらえているわけであるが、これは、日本独特の言い回しだろう。季刊を和英辞典でひいてみたが、4分割という意味のクウォータリーとしか出てこない。
 その季刊『生命誌』が32号で形を変えることになった。単純に計算して、8回の四季を経てきたことになる。発行が予定より遅れたり、実際には年3回にして春夏号にしたりと、いろいろあったから、桜の季節を迎えたのは、もう少し多いかもしれない。そういうことを思わせるネイミングだったのだ。今にして思えばなんとも味わい深い気がする。
 一斉に咲き、散っていく桜には、ふと、この世とあの世の境目が透けて見えてくるような気がするときがあるが、ちょうどこの季節に日本の社会の年度の区切りがあって、人の去就と重なるためでもあろう。この桜の季節に季刊『生命誌』は、今までの形をひとまず終わりにし、新しいスタートをする。新しい創出に期待を膨らませながら、一方でこの9年間の季刊『生命誌』を振り返り、まとめてみようと思っている。
 年々に桜への思いは変わるが、今年は8割がた散ったころの景色が印象深かった。淡いピンクに、雄しべの濃いえんじが刺し、葉っぱの薄緑色が混ざるころは、透けて見え始めた枝や周囲の風景の色も加わって深みを益す。咲きながら散っていくピンク一色の世界に心魅かれたのはあの年のことだったと、我が身の推移も思うわけだ。
 小雨に煙る今朝の景色はもう芽吹きの緑色だった。新しい『生命誌』にみなさまのご期待を願いつつ。雑感。

[高木章子]

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