研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
岡田節人先生との思い出
2017年3月1日
生命誌研究館の初代館長の岡田節人先生がお亡くなりになりました。私は出身の研究室が岡田先生から引き継がれた研究室でしたので、大学院生のころから岡田先生の存在と比較的近いところで生きてきた人間です。ただ、私が研究室に所属した時には、岡田先生は岡崎の基礎生物学研究所に移ってしまっていたので、岡田先生から直接指導を受けることはなく、岡田先生が残された雰囲気の中で研究生活を始めたということになります。黒地の板に白字で「岡田研究室」と書かれた表札が外されて研究室に遺っていたのを覚えています。
私にとって岡田先生との一番の思い出は、実は研究とは関係ありません。私は大学院当時、大学近くの会員制のテニスクラブで週に1回コーチのアルバイトをしていました。たまたま、休日にレッスンに入ったときに岡田先生にお会いして、岡田先生のヒッティングパートナーを務めることになったのです。後にも先にもその1度だけでしたが、そのときの記憶は私の中で特別です。私は、極めて熱心で、真剣な姿を見たのです。
当時、研究で岡田先生に語れるようなものは何もありませんでしたが、その後、生命誌研究館で、カドヘリンの進化の話やクモの発生の話をすることになるとは思ってもみませんでした。しかし、岡田先生は私が生命誌研究館に来て半年で退館されたので、こちらでもすれ違いになってしまいました。
岡田先生は生前に、日本の発生生物学の海外交流助成を目的として「岡田節人基金」を設立しています。この基金の助成を受けて、私の研究室の岩﨑がこの3月にドイツのキールで行われる日独合同発生生物学会で研究発表を行います。私も招待されていて発表しますが、発生学がまだまだ面白さを秘めた学問であることを世界の研究者と共有できるような発表にしたいと考えています。