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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【原虫と上皮細胞】

佐々木瑞希  はじめまして。1月からBRHの奨励研究員となりました、佐々木です。『ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ』でショウジョウバエのカドヘリンに関する研究をしています。カドヘリンは細胞間接着を担う分子なのですが、今回は私がこれに興味を持った理由についてお話ししたいと思います。
 私はこれまで動物の感染症、なかでもウシやウマ、イヌなどに寄生するバベシア原虫という病原体について研究してきました。バベシア原虫は赤血球の中に侵入し無性的に分裂増殖するため、宿主動物は貧血になってしまいます。この病原体を媒介するのがマダニです。原虫は吸血によってマダニの体内に取り込まれ、腸管内で接合した後、腸管上皮細胞に侵入、さらにはマルピーギ管や卵巣など様々な器官に入っていきます。このうち卵細胞に侵入できた原虫は生まれてきた幼ダニの体で増殖したのち唾液腺に移行するので、この幼ダニが次の動物に感染させる能力を持っています。
 マダニは腸管から異物が侵入してくるのを防御しており、腸管上皮を通過できるバベシア原虫はごくわずかと考えられています。原虫がどうやってマダニの腸管上皮細胞を通り抜けているのかはまだ解明されていません。これを考えていると、マダニの上皮細胞の構造についても知りたくなります。
 BRHに来て3ヶ月、現在私はショウジョウバエの細胞接着分子であるE-カドヘリンとN-カドヘリンの機能がどのように異なるのかを調べています。この2つのカドヘリンは似通ったドメインを持ちますが、そのリピートの回数や発現部位が異なります。この違いを詳しく調べることで、上皮細胞に特徴的な細胞同士の接着機構が明らかになるかもしれません。また、ドメインのリピートの回数と生き物の進化には大きな関連があり、E-カドヘリンとN-カドヘリンの間にも進化に関わる秘密が隠されているかもしれません。次にお会いするときは胸のときめくカドヘリンの研究データを皆さんにお伝えできるよう、頑張ります。

[ハエとクモ、そしてヒトの進化を知ろうラボ 佐々木瑞希]

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