研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【産卵実験に成功】
実験室見学ツアーを始めとして、色んなイベントで産卵実験を行ってきました。実に沢山の方にご覧頂いていますが、プラスチック製の人工葉にミカンの葉から抽出した味の成分を塗布して、アゲハチョウを騙して卵を産ませるというものです。これは、アゲハチョウのメス成虫が前脚にある化学感覚子で植物の“味見”をして、幼虫が食べれる植物を確認して産卵するという習性を巧みに利用した実験です。たぶん誰も気付いていらっしゃらないと思いますが、必要なタイミングで狙い通りに産卵行動をさせるというのは簡単な事ではなく、チョウの管理やコンディション作りに関する以外に高度な技術なんです。
さて、チョウの特性を理解してコンディションを管理するという、実は以外に高度な技術である産卵実験ですが、もちろんイベントで皆さんに喜んで頂くために磨いたものではありません。当研究室で取り組んでいる研究課題を推進するためのものなんです。この冬、当研究室で発見したナミアゲハの味覚受容体遺伝子の発現を、2本鎖RNAを注射する事で阻害したら(写真5)、産卵活性が低下するという事を確認できました。
遺伝子についても行動についても、長い年月をかけて技術や知識を蓄積してきて積み上げた努力がついに実った瞬間で、一人大はしゃぎしてしまいました。無理やり証拠の動画を見せられた館員の皆様、申し訳ありませんでした。 | ||||||||||
[チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ 尾崎克久] |