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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【モデル動物】

小倉絵里 生体を扱う研究では、しばしばモデル動物と呼ばれる動物たちが使われています。現在私が扱っているアフリカツメガエルもそうですし、マウスやニワトリ、あとゼブラフィッシュなどがそれにあたります。哺乳類、鳥類、両生類、魚類にそれぞれモデル動物がいるといった感じです。私はBRHに来る前にはゼブラフィッシュを用いて研究を行っていたこともあって、比較的モデル動物とは縁が深い生活を送ってきました。
 BRHでの見学ツアーなどの際にはアフリカツメガエルの紹介をするのですが、毎回のように聞かれることは、なぜアフリカツメガエルを使って実験をしているのですか?ということです。なんでヒキガエルでもなくトノサマガエルでもないのか?ということなのですが、その答えは、簡単に言ってしまえば色々な意味で“使いやすい”からです。飼いやすい、卵を取りやすい、観察しやすい、などなどの理由から使う研究者が多くなり、そうすると、その動物に対する様々な実験データが蓄積され、新たに研究をする際に参考にできる情報が多くなるので、また使う研究者が増える、という循環が起きます。このようにして一部の動物たちがモデル動物となっていったのだと思います。
 ただ、勘違いされやすいのは、モデル動物は実験的な側面においての代表選手であって、その動物種の生命現象を代表しているわけではない、ということです。アフリカツメガエルの発生が両生類の一般的な発生の形態を取るということではないのです。だからモデル動物の研究だけで生命現象のメカニズムを解明することは難しいでしょう。
 私達の研究室では今、ツメガエルだけでなくイモリを使って研究を始めています。イモリはツメガエルよりも以前から実験発生学でよく用いられてきました。しかし、産卵数の少なさや人工授精の難しさなど、ツメガエルより扱いにくい点があり、最近の分子生物学的な実験ではあまり用いられていません。では、なぜイモリを使おうと考えているかというと、ツメガエルとイモリでは発生の初期の段階で、細胞の運動方向が逆といっていいほど大きく異なる時期があります。しかし、その後に形成される体の形はよく似ているのです。このことから、違いの中にも共通の機構が存在していて、その機構は動物の形を作る上で必要不可欠なものだろうと思われます。このような理由から、ツメガエルとイモリを比較することで、発生過程の普遍的なメカニズムが見えてくるのではないかと考えています。
 イモリを扱っていると、やはりモデル動物とは違い、情報が少ない点など苦労はあります。でも、ツメガエルとばかり仲良くしていても見えてこない真実があると思うので、少々きまぐれなイモリさん(と私が勝手に思っているだけですが)とも仲良くやっていこうと思っています。

[カエルとイモリのかたち作りを探るラボ 小倉絵里]

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