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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【新年あけましておめでとうございます。】

楠見淳子 BRHに来て2度目のお正月を迎えました。昨年は、慌ただしいながらも、仕事、プライベートともに盛りだくさんの充実した一年を過ごしました。2010年も実りのある良い年になってほしいものです。
 さて、前回のラボ日記では「イヌビワ」のことを取り上げましたので、今回は、そのパートナーである「イヌビワコバチ」について少し。イヌビワコバチは体調2mm程度の小さな昆虫です(写真)。
イヌビワコバチ メス
イヌビワコバチ オス
イヌビワと同時にコバチも採集するのですが、一匹ずつ捕まえるわけではなく、花嚢(かのう;イチジクの実のように見える部分は、花が変形したものです)を採取して一網打尽にします。というのも、熟した頃の雄株の花嚢の中には、羽化直前のコバチが大量に潜んでいるのです。(ちなみに、食用のイチジクの中にはコバチはいないので、安心してお召し上がりください。)花嚢をプラスチック製のチューブの中に入れ、しばらく待つと、ぞくぞくとコバチたちが花嚢の外にでてきます。外に出てくる翅を持った個体がメスで、野外では彼女たちが花粉を運ぶ役目を果たします。一方、オスのコバチは一生を花嚢の中で過ごします。コバチのメスとオスでは、ライフスタイルが異なるため、それぞれの必要に応じた形態が進化し、同一種とは思えないほど見た目が異なっているのです。
 採集して来たイヌビワコバチは、一匹、一匹、顕微鏡を覗きながら写真を撮影した後、DNA配列の解析にまわします。これまで植物を中心に研究していたので、大量の虫をひとつひとつ観察するのは、私にとって初めての経験でした。最初は同じように見えていたコバチも、20匹、30匹と観察していくと、微妙な個体差に気付くようになります。私は昆虫に関してはド素人ですが、それでも同じ対象を繰り返し見ていると、「目」が養われてくるもののようです。そういう「目」で見ると、以前は同じにしか見えなかった、他の昆虫の標本も違ってみえてくるから不思議です。時間をかけて見ることで、様々な疑問やアイデアが湧いてくることもあります。
 振り返ってみると、昨年の採集での最大の収穫は、生物を研究する原点に立ち戻ることができたことだったのかもしれません。

[DNAから共進化を探るラボ 楠見淳子]

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