研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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皆既日食はご覧になりましたか? 日本中大騒ぎでしたね。当日の朝はあいにくのお天気でしたので、私は半ばあきらめていて、うっかり食の最大時を逃してしまいました。気づいたときには後の祭り...残念。わずかに欠けているところには間に合いましたが、インターネットやテレビの映像を見て期待していただけに、なんだか拍子抜けしてしまいました。
写真A:イヌビワとイヌビワコバチ
それはいいとして、前回のラボ日記(3/16日公開分)で、今年の春は野外に採集に行きます! と書きましたが、その宣言通り、神戸、福岡、鹿児島へ採集旅行に行ってきました。ターゲットは日本では関東以西に分布するイヌビワとイヌビワコバチです(写真A)。イヌビワは、林道沿いや公園など身近な所によく生えており、注意して探してみるとわりと見つけやすい植物です。春には、冬を越した花嚢(かのう;イチジクの実のように見える部分は実は花が変形したものです)からコバチが羽化してでてくるので、そこをねらって採集します。最適なのは、羽化寸前のコバチが中にいる花嚢ですが、外から見るだけではコバチの有無やその状態まではわかりません。ひとつひとつ割ってみて確認しながらの作業です。なかには、時期を逃してしまい、コバチのいる花嚢をなかなか見つけられない採集地もありましたが、当初の目標に近い数のサンプルを採集することができ、満足しています。
そして、今回のもうひとつの収穫は、植物の葉の形態(サイズや形、厚み、触感)が同じ種の中でも個体によって違いがあり、非常に多様であることを再認識したことです。イヌビワの場合、図鑑には『葉身は8〜20cm、幅3〜8cm、先は尖り、基部は円形またはハート型』とあるのですが、実際には、写真Bのように十枚十色(?)です。触ってみると、厚みや質感もわずかずつ違っています。採集したときの印象では、日照条件が葉の形態に大きく影響しているようですが、同じような環境に生育しているものでも形態に違いがみられるので、遺伝的に決まっているところもあるのでしょう。同じ種に注目して野外で観察してみるのもなかなか面白いですよ。
写真B:イヌビワの成葉 右端はホソバイヌビワ(イヌビワの亜種)
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[DNAから共進化を探るラボ 楠見淳子]
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