研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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ゲノムの解読が進み、様々な生命現象が分子レベルで解析されて、生物のことなど、もうすっかり分かろうとしているのか、と思われているのかも知れません。でも研究の現場にいるわたしには、むしろ最近ますます混沌としてきているように感じています。確かにどんどん情報は増えているのですが、情報が増えることによって逆に分かっていると思っていたことが、やっぱりそうじゃなかったのかも、こっちが正しいのではというように、まだ結論が出せない状況だということが分かってきているようなのです。動物の系統関係は高校の教科書にも必ず出ています。日本ではそれを無批判に覚えておくべきこと、という扱いに(多分)なっています。系統関係はもう既に分かっていることだと思っている人も(研究者でさえも)多いようです。しかしNatureやScienceといった有名雑誌を最近にぎわしているのは、例えば「脊椎動物に最も近縁の無脊椎動物はどれか?」といったごくごく基本的とも思われるような問題です。この問題の答えはどうやら魚とは似ても似つかない格好をした尾索動物のホヤということで落ち着きつつあるようです。では、これまで脊椎動物に最も近縁だと思われていた頭索動物のナメクジウオはどの動物とグループを作るのか?「なんと棘皮動物(ウニ)とグループになる」という論文が出たかと思うと、「これまで考えられていた通り脊椎動物、尾索動物とグループになる」という論文が出たり。これが昨年のこと。混沌を打破するためにはさらに情報を増やせばよいのだろうか?それとも全く新しい方法論を展開するべきなのか?でも新しい方法って?研究者個々人としては日々やれることをやるしかないのでしょう。でも、やれることをやり続けるだけではダメなのだろうな、とちょっと悩める春です。
[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 秋山−小田康子]
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