研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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先日蔵書を整理していて、久しぶりに「インセクタリウム」という月刊雑誌を大量に手に取りました。かつて「多摩動物公園昆虫愛好会」の機関誌として刊行され、2000年の12月号(通算443号)をもって終刊となったものです。「専門家」にとっても読みごたえのある記事も多く、文章は読みやすく編集され、また多くの美しい写真も掲載されていました。私はこの雑誌をたいへん気に入っていて、年内で終刊となることが9月号で発表されたときは、なんとも言えぬ寂しい思いでいっぱいでした。発行者である「東京動物園協会」の財政上の理由から刊行終了にいたったということで、仕方ないとはいえ、たいへん残念なできごとでした。今回久しぶりでたくさん雑誌を手にして、あらためて感慨を募らせたところです。
以前依頼を受けて、私はこの雑誌に記事を2度執筆・公表させていただいたことがあります(1992年と1999年)。編集部の新井・大平両氏は、執筆にあたって適確なご指示を下さり、おかげで自分なりに納得のいく記事になりました。両氏は最終刊の編集後記で、「読者」「執筆者」「当誌をささえてくださったすべての方」に対する御礼の言葉を述べておられます。あらためてそれを読み、(当然のこととはいえ)この雑誌が多くの人々の協力によって成っていたことを再認識させられ、その一方、編集者としての両氏の優れた力がなければ、やはりこのような良質の雑誌にならなかったのでないかと思いました。
雑誌がなくなってもう4年以上が過ぎましたが、私が以前この雑誌に掲載させていただいた記事は、今もいろんな方々に私の研究・興味をお伝えするとき、コピーをお渡ししたりして利用させてもらっています。この雑誌のあったことの意味、この雑誌の編集というお仕事の意味は、私にとっては今もちゃんと生きています。そして私以外のいろんな人にとっても、このような本当に良質な仕事の価値は、目立たないものとはいえ、息長く生きつづけるのでないかと思います。
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[吉田昭広]
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