研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
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先日,大学の後輩でタケ類てんぐ巣病を研究しているクワガタ博士が「現代化学1月号」に掲載されている面白い記事を紹介してくれた。その名も「イグ・ノーベル賞2年続きで日本から」。
ノーベル賞ならいざしらず,イグ・ノーベル賞とは何ぞや?この記事によれば,イグ・ノーベル賞は1992年よりパロディー科学雑誌の"The Annals of Improbable Research"によって主催されており,「まず人を笑わせ,つぎに考えさせるものでなくてはならない」業績が受賞対象となると紹介されている。そして,受賞者はハーバード大学で授賞式に出席しMITで受賞講演をするとのこと。
日本からも1992年以降何人もの受賞者を輩出しており「1992年薬学賞:足の悪臭の原因物質の化学的解明(資生堂)」「1994年物理学賞:ナマズの尾の振り方と地震発生との関係(気象庁)」「1997年経済学賞:たまごっちの開発によりバーチャルペットへの労働時間を費やさせた功績(バンダイ・ウィズ)」「2002年平和賞:バウリンガルの開発(タカラ)」など9件19名が受賞の対象になっている。受賞者は一様に受賞講演で「このような賞があるなんて知らなかった」と驚くようだが,受賞内容を見るとどれも非常に独創的なアイデアに溢れていて日本人もなかなかやるではないか,と嬉しくなってしまう。特に身近な製品が受賞対象になっているのは親しみが湧いてくる。これなら「ノーベル賞は無理でもイグ・ノーベル賞なら」という気持ちにもなれそうだ。ちなみに「イグ」とは「愚かな」という意味のようだが,もしかしたらイグ・ノーベル賞の方が元祖ノーベル賞よりも独創性が求められるのでは?とも思ってしまう。
さて,肝心の2003年の日本からのイグ・ノーベル賞は「化学賞:ハトを寄せつけない銅像の化学的研究(金沢大学)」。公園などに置かれた大抵の銅像は鳥の糞で汚されているのに兼六園の銅像はなぜかハトやカラスなどの糞に汚されていないことに受賞者の先生が気付いたのが研究のきっかけだそうだ。そして銅・鉛・ヒ素の合金にはハトもカラスも近寄ってこないことを明らかにしたらしい。もっとも,受賞者の先生は材料破壊の理論と実験が本来の専門らしいが。
なにはともあれ,ここ数年ベランダにやってくるハトの害に悩まされている私にとっては朗報だ。なにせ,つがいのハトがやってきてベランダは糞だらけ羽毛が舞っている状態である。ネットを掛けても隙間を作って侵入してくるし,業を煮やして水,お茶,油,ダニアースまでぶっかけても凝りもせずにやってくる。ふと気付けば人をバカにしたような顔をして「グルグル」鳴いている。さすがの私も諦めて放っていたら,いつの間にか4羽のハトが仲良く戯れている。しかも最近は,夜中の12時頃にベランダの室外機の上で「グルグル」鳴いている。腹をたてて布団タタキでぶっ叩いて追い払ってもいつの間に戻ってきている。お前ら鳥目じゃないのかよ!
この研究,目下特許を出願中で商品化される日も間近いとある。その日を首を長くして待つことにしよう。
[昆虫と植物の共進化ラボ 奨励研究員 小野 肇]
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