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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【卵製造機】

秋山-小田康子

 今日、生物の意義は子孫を残すことだとか、自分のDNAを残すことだとか、そういう考え方があります。もちろんこれをそのまま人間に当てはめると、今の時代、かなり問題になりますが、生き物を見ているとこの考え方に納得してしまうこともしばしばです。私が飼育しているクモもそのような感じ。メスのクモなんて卵を作ることに特化した機械のようにも見えてきます。エサを食べると(エサというのはコオロギなのですが)メスの腹部は見る間に大きくなります。はち切れてしまうのではと心配になるくらいです。そして数日のうちに、ときには数時間のうちに、数百個の卵をうみます。(1) 口にした食べ物が、(2)クモの体を通って、(3)卵に変わりました、という具合です。もちろん、消化してエネルギーに変えて、卵巣に栄養を送って、、などとステップを踏んでいるのでしょうが、コオロギがクモの体の中でそのまま卵に変えられているかのようです。エサを取る時と卵をうむ時以外はほとんど動きませんし、全エネルギーを次の世代を作ることに回そうとでもしているのでしょうか。いま、卵をたくさん必要とする実験を始めたところです。なかなかうまく行かず、試行錯誤の日々ですが、卵を提供してくれているクモに感謝して、私もせっせとエサをやっています。



[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 研究員 秋山-小田康子]

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