館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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名探偵ポワロと久しぶりに出会って
2018年4月16日
ラジオで斉藤兆史先生(東大教授、英文学)が明治以来の日本人がどのように英文学を読んできたかというお話をしていらしたので、お台所をしながら楽しく聴いていました。すると最後に、皆さんも英文学を楽しまれるといいですよとおっしゃって、とくに三人を推せんなさったのです。一人がカズオ・イシグロ。私も、「忘れられた巨人」と「日の名残り」を興味深く読みましたが、翻訳です。もう一人は・・・忘れてしまいました。そして最後にあげられたのが、アガサ・クリスティ。これにピピッと反応してしまいました。アガサ・クリスティは大好きで、ほとんど全部読んでいます。これも翻訳ですが、ただ彼女の英語は本当に読みやすく、英語でも何冊か読みました。
名探偵ポワロが灰色の脳細胞で考えることと事実だけが筋道立てて語られるので、するする頭の中に入ってきます。複雑な心理や細かな風景の描写はほとんどなく、日常の言葉ばかりですから難しいことが苦手の私にはピッタリです。クリスティなら試みてもよいかなと思い、電車の中で「オリエント急行殺人事件」を読み始めました。久しぶりのクリスティで、とても楽しんでいます。殺人は決して好きではありませんが、創元推理文庫で?のついた仲間、ポワロやエラリー・クィーンなら大丈夫。忘れっぽいという特技があるので、細かいところはすっかり忘れています。いくら何でもオリエント急行の結末は覚えていますけれど。
斉藤先生の説明ではクリスティの作品は82冊。読破するのにちょうどよい数で、私は後3冊ですとおっしゃっていました。読破は日本語で許していただきますが、でも暫くの間は英語を楽しもうと思っています。