館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
バックナンバー
久しぶりにネコジャラシに出会って
2016年10月3日
「雑草というものはありません」。昭和天皇のお言葉として残っています。その通りなのですが、広大な野原ではなく、限られた大きさの庭を楽しもうとするとそうも言ってはいられません。ここはバラを楽しむところ、ここは季節毎の小さな草花でさまざまな色を楽しむところときめたらそれ以外の草たちは抜かないと何が何だかわからなくなります。実は今の庭は、当初一面どくだみが生えていました。どくだみって葉っぱはスペードの形で、白い花が可愛い。びっしり生えているときれいなのですが、やはりすべてがこれで覆われているのはまずいので、いっしょうけんめい抜きました。御存知のように、根がしっかりと張っていて一筋縄ではいかない相手です。でも、根気よく続け、20年が過ぎた今では外へとつながる小路の脇にだけ残し、そこでは思いきり咲いてよいことにしています。他の草たちも生えますから、夏には週末毎の草取りは欠かせませんが、まあまあの状態は保てることになりました。
ところで、花壇の土が少し固くなったので、今年の春、植木屋さんに土を入れてもらいました。土は確かに軟かくなり、花たちは元気ですが、ふと気づいたら今まで庭では見なかった草たちがあちらからもこちらからも・・・主役はヒメシバとエノコログサ(ネコジャラシ)です。子どもの頃野原で遊んだり、摘んできておままごとに使った野草で、その頃の風景や近所のお友達を思い出してとてもなつかしくなったのはよいのですが、また新しい闘いの相手ができてしまいました。やっと落ち着いたのに、またやり直しです。さまざまな植物のタネだけでなく微生物もいるでしょうし、ミミズもいるのが土。土は生きものということを改めて思った次第です。「生命誌絵巻」「新・生命誌絵巻」「生きもの上陸大作戦」でも描かれている生きものに眼を向けて終りになりがちですが、実はそれを支えている地面がどのようなものだったかを考えながら見ることが大事とも思いました。いのちは大切なものであり、いい加減に向き合ってはいけないけれど、そうは言ってもそれを奪わなければならないこともある・・・"雑草というものはないということはよくわかっていますけれど、でもこれは放ってはおけないでしょう"と言い訳をしながら、週末は、お日様の光が強くならないうちにと早起きしなければならなくなりました。
ヒメシバは穂の部分をふくらませてまとめ、ちょうちんの形を作り、閉じたり開いたり・・・経験のある方はそうそうと言って下さるでしょうが、御存知ない方はさっぱりわからないかもしれませんね。とにかく子どもの頃草遊びはよくやりました。今、どうなのでしょう。