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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【新年おめでとうございます】

2008.1.7 

中村桂子館長
 新年おめでとうございます。
 今年は子年、私の年です。自分の干支って面白いですね。なんだかひいきにしたくなります。最近ではネズミというとペットショップにいるマウス(ハツカネズミ)やディズニーランドのミッキーマウスを思い浮かべる方が多く、ネズミのイメージも変りましたが、広辞苑には、「ひそかに害をなす者のたとえ」という項目があるのです。干支の一番になったのもネコやウシをだましてのことというお話もありますし。でも動物に対するイメージって、そのものの性質よりも人間の立場から見てどうかというものが多いわけで……。ネズミにも言い分はあるわけです。というわけで今年はいろいろな事柄のできるだけよいところを見て行くようにしようと思っています。
 昨年末、岡田節人前館長の文化勲章受章をお祝いして、京都大学の研究室とBRHの関係者が集まり、ゆっくりお喋りをする会をしました。発生生物学という地道な基礎研究が評価されたこと、BRHを創ることに尽くされた活動も「文化」の中に入っているだろうことで関係者はとても嬉しく、皆が気分よく準備をしてくれたからでしょう。たいへんよい雰囲気の会でした。家族連れも多く、小さな子どもたちが楽しそうにしているのを見て、“生きものはつながっていくんだ”と実感しました。
 ところで、その時の話から、「生命誌研究館」を構想し、現実のものにしたいと思いこんだ私が人々にお願いをし始めたのが1988年、今年から数えると20年前になることを思い出すことになりました。設立準備室ができたのが91年、創設が93年ということはいつも頭の中にありますが、それまでのことはきちんと整理していなかったので、改めて20年なんだと思い直しています。
 方向はきまっていますし、おかげさまで20年前にはほとんどわかっていただけなかった「生命誌研究館」のコンセプトも理解されるようになってきたのはありがたいと思っています。でも、正直に申し上げると、本当の本当にやりたいこと、考えていることは、通じていないと思うことも少なくありません。とくに、子どもの科学教育の場と思い込んでいる方にはまいります。子どもや若い人たちには大勢来て欲しいし、一緒に遊んだり考えたりすることはとても大事だと思っていますが、“理科離れしているから科学教育をしよう”とか“科学リテラシーをあげるために”とかいうのは…。岡田先生の常套句を借りるなら“かなわんですなあ”です。
 最近とみに実感しているのが子どものもつすばらしい能力です。実は今年の仕事始めは、小学校6年生からのエールにこたえること。楽しみにしています。結果は次回報告します。お互いに、一緒にやろうよというのが正直な気持です。子どもや若い人たちと、今年もできるだけたくさんつき合いたいと思っています。だんだん、しかたがないからつき合ってあげるよと言われることになるのだろうなと心配しながら。「どうぞよろしくお願いいたします」です。


 【中村桂子】


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