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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【生命誌が教育につながって・・・(2)】

2007.6.15 

中村桂子館長
 先回の続きとして、今度は塔南高校の紹介です。こちらは今年の4月に始まったばかりですので、どんな風に進むかまだ分りませんが、きっと面白いことが生れるだろうと期待しています。「教育みらい科」という新しい科を作り、「先生を目指そう」という生徒を育てようとしているのです。教育の問題があれこれ議論されていますが、そこで一番大事なのは人。なかでも、生徒たちが「大人になったらあゝなりたいな」と思う先生ではないでしょうか。塔南高校の先生方が、そのような先生に必要なものは何かと考え、「知性」「志」「実践力」をもつことが必要という答を出しました。それを身につけたすばらしい先生へ向けての準備ができる授業にしようと考えて作ったのが「教育みらい科」です。人間をよく知って、人間の生き方を考えることを基本にし、哲学や倫理などを勉強するほか、社会と接すること、先生と人間として接することなど。いろいろな工夫があります。それを支える知の一つとしての科学も重視されていますが、考えた結果、物理・化学・生物・地学と分けずに、自然とその中にいる人間を考えるカリキュラムにしたのです。宇宙の中での生命を考える、地球とはどのような星か、生命とはなにか、地球と生命の共進化というような形で総合的に学ぶためのカリキュラムが作られました。
 もちろん基本は身近な自然の観察。そこから始めてこの壮大なテーマに取り組もうというのですが、そこで「生命誌」を中心に置いてみたいという相談がありました。生徒たちがどう受け止めてくれるか、そこが大事ですが、先生方の熱意と教育委員会の応援ぶりに心動かされ、何かできることがあったらと思い、私も応援団の一人になりました。急いではいけませんし、押しつけではよい結果が出るわけはありません。ゆっくり、若い人たちとの合作で新しいものが作っていけたらいいなと思っています。考えてみたら「知性」「志」「実践力」は先生だけでなく誰にも必要なもの。どうなるか。これからが楽しみです。
追記. 自然の観察といえば、この前の日曜日(6月10日)の夕方、東京の家の近くのホタルが飛び始めました。23区内で野生のホタルが見られる珍しい場所がたまたま歩いて数分のところにあるのです。朝早くに“ソロソロですよ”というお知らせがポストに入っていたので(成城学園小学校の先生だった方からの便りです)、見に行ったのですがまだ3匹ほど。来週が楽しみです。


 【中村桂子】


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