ラボ日記
2025.02.18
「なぜ・どうして?」への答え方
五歳児設定のキャラクターが「どうして○○は××なの?」と問いかける有名な番組があります。先日,久しぶりに視聴したのですが,私はちっとも答えられず,茫漠と生きているダメな大人と認定されて叱責されてしまいました。悔しいので少し言い訳をしてみたいと思います。
私の専門は非モデル昆虫を対象とした神経行動学という分野です。もう少し噛み砕くならば,その辺にいる身近な昆虫の意外に凄い行動の仕組みを調べる,といった感じでしょうか。動物の行動を扱う研究者にとって,「なぜ・どうして?」という問いは非常に答えにくいものです。ニコ(チコではない)・ティンバーゲンというノーベル賞を受賞した偉大な動物行動学者は,「なぜ?という質問には答え方が4種類ある」と言っています。そして,この考え方は世界中の研究者に広く受け入れられたお作法となりました。詳しい説明は関連書籍やウェブページをご覧いただくとして,ここでは特に違いをイメージしやすいと思われる2種類だけ取り上げます。
a)どんな意味・機能があるのか?
b)どんな仕組みなのか?
「どうしてアゲハチョウのメスはミカンの葉に卵を産むの?」と聞かれたとき,「ミカンの葉しか食べられない幼虫が困らないようにするため」という答えはaの観点です。「ミカンの葉に含まれる特定の化学物質を前脚のセンサーで感じられるから」という答えはbの観点です。そして,どちらも間違っていません。ということで,五歳児キャラがニコくんであれば,叱ることなく「答え方が色々あって難しいよね〜」と励ましてくれることでしょう。でも,それではバラエティーとして成立しませんね。。
さて,少し前に本を一冊いただきました。
生きもの「なんで?」行動ノート 絵・文:きのしたちひろ(木下千尋)
タイトルに「なんで?」と入っているため,研究者としては一瞬ドキッとしますが,キチンと前書きに「答え方が4種類あり,本の中では特に答え方aの意味・機能を中心に紹介する」と説明されています。それもそのはず,作者の木下さんは,東京大学にて海洋生物の行動生態学研究で博士号を取得したのち,日本学術振興会特別研究員PDを経てイラストレーターとして活動なさっている方です。40種類ほどの動物の「おもしろ行動」が,学術論文をもとに(←ここ重要)紹介されています。研究者が何を疑問に思い・どのような実験をし・その結果をどう解釈したのか?ほのぼのしたイラストと文章で見開き2ページにわかりやすくまとまっています。出版は2023年2月ということで,二年間も知らずにいたのが実に残念!ちなみに,個人的な推しは「産卵の時に心臓が止まるサケ」です。
私の専門は非モデル昆虫を対象とした神経行動学という分野です。もう少し噛み砕くならば,その辺にいる身近な昆虫の意外に凄い行動の仕組みを調べる,といった感じでしょうか。動物の行動を扱う研究者にとって,「なぜ・どうして?」という問いは非常に答えにくいものです。ニコ(チコではない)・ティンバーゲンというノーベル賞を受賞した偉大な動物行動学者は,「なぜ?という質問には答え方が4種類ある」と言っています。そして,この考え方は世界中の研究者に広く受け入れられたお作法となりました。詳しい説明は関連書籍やウェブページをご覧いただくとして,ここでは特に違いをイメージしやすいと思われる2種類だけ取り上げます。
a)どんな意味・機能があるのか?
b)どんな仕組みなのか?
「どうしてアゲハチョウのメスはミカンの葉に卵を産むの?」と聞かれたとき,「ミカンの葉しか食べられない幼虫が困らないようにするため」という答えはaの観点です。「ミカンの葉に含まれる特定の化学物質を前脚のセンサーで感じられるから」という答えはbの観点です。そして,どちらも間違っていません。ということで,五歳児キャラがニコくんであれば,叱ることなく「答え方が色々あって難しいよね〜」と励ましてくれることでしょう。でも,それではバラエティーとして成立しませんね。。
さて,少し前に本を一冊いただきました。
生きもの「なんで?」行動ノート 絵・文:きのしたちひろ(木下千尋)
タイトルに「なんで?」と入っているため,研究者としては一瞬ドキッとしますが,キチンと前書きに「答え方が4種類あり,本の中では特に答え方aの意味・機能を中心に紹介する」と説明されています。それもそのはず,作者の木下さんは,東京大学にて海洋生物の行動生態学研究で博士号を取得したのち,日本学術振興会特別研究員PDを経てイラストレーターとして活動なさっている方です。40種類ほどの動物の「おもしろ行動」が,学術論文をもとに(←ここ重要)紹介されています。研究者が何を疑問に思い・どのような実験をし・その結果をどう解釈したのか?ほのぼのしたイラストと文章で見開き2ページにわかりやすくまとまっています。出版は2023年2月ということで,二年間も知らずにいたのが実に残念!ちなみに,個人的な推しは「産卵の時に心臓が止まるサケ」です。
宇賀神 篤 (研究員)
所属: 昆虫食性進化研究室
現在はアゲハチョウの脳の研究を進めています。これまでの研究はリサーチマップを参照。