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研究館より

ラボ日記

2024.12.03

背高(?)泡立草

秋から春先にかけて徒歩通勤をしています。「とかいなか」をキャッチフレーズとする高槻らしく,大通り,住宅街,川沿いと色々な雰囲気を楽しめる片道約30分の経路です。飲み屋帰りに歩く真冬の川沿いは,一発で酔いも覚める寒さですが…。途中の空き地や河川敷では,直立した草が集まり黄色い花を咲かせている様子が目に入ります。多少なりとも植物に興味をお持ちの方であれば,すぐに「セイタカアワダチソウのことだね!」とピンとくることでしょう。私も初めはそう思いました。しかし,通るたびにどうにも違和感が拭えません。ちっとも「背高」ではないのです。

私が子供の頃(30年ほど前)に馴染みのあったセイタカアワダチソウといえば,大人の背丈を超えるくらいのノッポ植物で,なぜだか株の下部の葉は枯れていることが多く,お世辞にも品が良いとは言えない見た目の植物でした。他の植物に対して生育を抑制する物質を分泌し(アレロパシーと呼ばれる現象),生息地が重なるススキを駆逐する侵略的外来種,という悪役ポジションにピッタリです。ところが,目にとまったセイタカアワダチソウらしき植物は,膝丈からせいぜい腰の高さまでしかなく,上から下まで青々とした葉が並び,ススキと並んで朝日に照らされている様子は何だか風情すら感じさせるのです。これは一体どうしたことでしょう。

これまでの研究から,アレロパシーの原因物質が高濃度ではセイタカアワダチソウ自身の生育をも抑制すること,在来の「雑草」と異なり本来は養分の豊富な土壌でないと生育できないこと等が明らかになっているようです。短期間で隆盛を極めたものの無理が祟ったという平家物語のような事情でしょうか。そんな感慨に浸りつつ別の空き地に目をやると,そこでは「The悪役」な見た目でワシワシ茂っていましたとさ。

宇賀神 篤 (研究員)

所属: 昆虫食性進化研究室

現在はアゲハチョウの脳の研究を進めています。これまでの研究はリサーチマップを参照。