1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. 夏は天王山

研究館より

ラボ日記

2024.08.01

夏は天王山

「夏は受験の天王山」,受験生の頃によく耳にした言葉です。試験当日を天下分け目の関ヶ原の戦いとすると,その前にある夏の時期は山崎の戦いに相当するということで,夏休みの重要性を強調するキャッチフレーズとなっているようです。

言うまでもなく天王山は羽柴秀吉と明智光秀が激突した山崎の戦いで名高い地です。しかし,東京出身の私にとってはあまり馴染みのない存在であり,近畿地方のどこかにそびえる高い山だと思い込んでいました。実際の天王山は,生命誌研究館のある高槻市からほど近くに位置する小ぶりの山(標高は都民の憩いの場・高尾山の半分くらい)です。近年値上がりが凄まじい有名な国産シングルモルトウイスキーの蒸留所が麓にあることも,高槻に引っ越してきてから知りました。あれ,でも,史実では,天王山を制した秀吉が樹立した豊臣政権は関ヶ原で敗れてしまうわけで,そう考えると「夏は受験の天王山」とは,「夏に努力したからといって必ずしも合格するとは限らないのだから油断するな」という戒めの言葉としたほうが良いのでは?

さて,研究者にとっても夏は天王山のようなものかもしれません。というのも,公的な競争的外部資金(我々が科研費と称するアレ)の多くは9月中旬が応募の締め切りです。また,次年度4月着任の大学等の人事公募もこの時期に特に活発化します。つまり,非常に大雑把に言ってしまうと,次年度以降の研究活動の可否は夏までの研究業績の多寡に大きく左右されるということです。「科研費申請までに論文が通るかヒヤヒヤしたよ〜」といった会話をしたことがない研究者は,よほどの天才かモグリのどちらかだと思います。今年の夏も,多くの研究者が論文が早く通ることを祈っていることでしょう。私もその1人です。もちろん,論文は投稿してから採択されるまでに審査と修正を経て数ヶ月かかるのが一般的ですので,夏に慌てて取り掛かっても時すでに遅し……。計画性と日頃の準備が大切なのは戦国武将や受験生でなくても同じということで。
 

宇賀神 篤 (研究員)

所属: 昆虫食性進化研究室

現在はアゲハチョウの脳の研究を進めています。これまでの研究はリサーチマップを参照。